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虚空をつかむ


絶対的に届かない人、というのは存在する。

頑張っても頑張っても圧倒的過ぎて永遠に届かない人。

私はそういう時、大体同じ言葉で自分を慰める。

『あの人は才能があるからね。』

乱暴だけど¨才能¨という言葉は私を守る切り札になる。

『才能』で片付けてしまえば、誰も何も言えない。だってほんとにすごい『才能』だし。

けれど、『才能』で片付ける私は、その度に自分で自分を傷つけてるって知ってるのかな。

正直、悔しい。

圧倒的な才能を見せられて、しゃがみこむことしかできない自分が、とてつもなく悔しくて、そして恥ずかしい。

だから、私はその人の欠点を洗いざらい探して、それを見つけて自分でホッとする。あの人にも欠点があるんだな、とちょっと嫌な安心をする。

なんてつまらないんだろう。

そんなことしたって、自分に才能が手に入る訳じゃないのに。

まるで虚空を掴んでるように、手のひらには何も残らないのに。

ばかみたい。そんなことしたって自分が一番傷つくくせに。

そんな自分が嫌いになる。

ときどき、私は私の嫌いな¨わたし¨になる。





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