夢日記

随分前にみた夢を書き留めておいたものです。変な夢ばっかり見ます。高校生の頃に見た夢は過激すぎて書けません。
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15.8.21
その土地には恐ろしく凶暴な猫がいた。土地の名前は忘れてしまったが、とにかくそこにしかいない種類の猫で、そこにしか存在しない種類の恐怖だった。

猫はとても小さい。普通の猫に比べても体の大きさは半分くらいしかない(犬は大小様ざまな種類がいるのに、猫は僕の知る限りだいたい同じ大きさであるというのは不思議だ)。体毛は長くまっくろで、鋭くて黄色い大きな眼をもつ。 

見た目もとても特徴的だが、その猫の本質は言うまでもなくその獰猛さにある。地球上で人間を積極的に攻撃する生物は3種類しか存在せず、そのひとつがこの「クロネコ」なのだ(もう一はオーストラリアに生息するワニで、後のひとつは忘れてしまった)。

僕は現地の観光局で(クロネコ見たさの少なくない人々により観光業が成り立っているらしい)クロネコの生態についてのビデオを見た。
❶彼らはとても素早いです。まるで弾丸のようなスピードで走ります。
❷彼らは水辺に現れます。群れを成しているわけではありませんが、この土地には水辺というのはひとつしかありませんので、必然的に複数の個体が集まることになります。
❸彼は人間と目が合うと猛スピードで襲ってきます。具体的に言えばふくらはぎの辺りを咬みつこうとします。躊躇してはいけません。そうなる前にとにかく蹴ってください。一度ひるむとしばらく襲ってきません,
❹彼は体の大きさを変えることができます。最小で大きな蜂くらいになったものが目撃されています。
❺万が一彼らに噛み付かれてしまった場合無理に剥がそうとせず、そのまま病院へ向かってください。幸いまだ死亡例はありませんが、迅速な処置が必要です。

ビデオを見終わった僕は町のはずれにある川へ向かった。川に比べて広い河原があった。土手から見下ろすと数匹のクロネコを見ることができた。僕はもっと近くで見たいと思い、土手から河原へと降りた。思ったよりゴツゴツと大きな石がたくさんあり歩きにくかった。

足元に気を取られていると、1匹のクロネコが僕の前に現れた。それは生物というよりガス状の浮遊体のように見えた。黒の中で黄色い眼が妖しく光った。黄色い眼が存在しているというよりは、黒いガスの中心に黄金の塊があり、その光が漏れているみたいだった。

そんなことを考えていたとき、僕は恐ろしい事実に気が付いた。クロネコの目を見てしまった!次の瞬間、クロネコは鋭いライナーのように僕を目がけて突進してきた。反射的に僕は足を出して突進を止めた。ガスのように思えたが、しっかりとした質量を靴の裏に感じた。クロネコは2メートルほど吹き飛んだがまるで怯んだ様子はなかった。

僕は川の中に逃げようとした。いくらクロネコでも水の中には入れないはずだ。数度の突進をかわしながら、なんとか川までたどり着き、ざぶざぶと川の中央まで飛び跳ねるように入っていった。川幅は10メートルほどで、水深はいちばん深いところでも膝のあたりまでしかない。僕はひとまずホッと息をつく。やはりクロネコも水の中までは追ってこないのだ。とりあえずこのまま下流に向かって歩き、クロネコがいなくなったポイントで町に戻ればいい。

ひとつ奇妙なのは僕を追ってきたクロネコが、僕に蹴られるたび小さくなっていったことだ。先ほど川に入る直前にチラッと視界に映ったときは15センチくらいしかなかった。ガスが霧散していくように縮んでいたのだ。そういえば追いかけてきたクロネコはどうなったのだろう。

辺りを見渡すと、僕が走ってきた方向にクマバチくらいの大きさの黒い塊が浮かんでいた。一瞬のことだった。その塊は僕の右足の太腿に突き刺さった。クロネコだった。鋭い痛みを感じながらも、僕はハンカチを取り出し、いまや哺乳類としては到底ありえないサイズまで縮んでしまったクロネコに覆いかぶせ、ギュッと力を入れた。虫とは違う、ぐちゃりと嫌な感触が手に伝わった。

太腿は痛んだが歩けないほどではなかった。僕は再び下流へと歩き出そうとして、気が付いた。川の両脇に等間隔でずらりとクロネコが並んでいるのだ。高速道路の電灯のように黄色い目を光らせたクロネコがどこまでも続いていた。もう逃げることはできないのだ。(覚醒)

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