見出し画像

「年齢不問」の本音と建て前

-BBAサバイバル10-

ハローワークの職員にもいろんなタイプの人がいる。そつなく無難に仕事する人(竹)、ぶっきらぼうな人(梅)、親身に対応してくれる人(松)。

一番多いのが、竹タイプの人。ほんと事務的にキーボードをたたき、求人票の検索、印刷、紹介状の発行、電話連絡と、よどみなく作業する。廃棄率を考慮して他の人より多めのリストを持っていっても、文句も言わず、マニュアル通りの仕事をする。ありがたい。

コンビニの店員に似ている。これもマニュアルで、余計なことを言わないように、と指導されているのだろう。「お客さん、またのり弁ですか?」とか、「フライドチキンばっかり食べてたら、血糖値上がりますよ」などと言われたら、足が遠のく。

皆、それなりの事情があって、やむなく来ている。そうしたデリケートな部分に立ち入らないよう、関わり合いにならないように距離を置いている。コロナ対策でカウンターには透明の仕切りが設けられたが、薄っぺらなシートのあちら側とこちら側では、住む世界が全く違う。檻の中の囚人と看守ぐらいの差だ。

ごくまれに、松タイプの人がいる。初めての面談時、ピックアップリストの多さを見ても眉一つ動かさず、粛々と業務をこなし、当然、片っ端から撥ねられるのだが、撃沈前に一言を添えてくれる。「そうですか、‥‥‥、経験も十分お有りだし、資格もお持ちなんですけどねえ、‥‥‥。ええ、‥‥‥はい。はい、分かりました。‥‥‥‥ありがとうございました。」

今更言うまでもないことだが、リストアップしているのは、すべて年齢不問の会社である。厚生労働省からのご指導とかもあるのだろう、高齢者の雇用促進という看板は外すわけにいかないので、ハローワークの求人は、正当な理由がない限り、年齢を限定してはいけないことになっている。力仕事を伴うとか、スタッフのキャリア形成を図るためとか、まあ、それなりの理由が求められる。

しかし、それはあくまでも建前であって、実際に連絡を取るとなんだかんだと断られる。ハローワークの担当者も、そこで「年齢不問と書いてありますよね」などと言う無粋なことは言わない。暗黙の了解事項なんでしょうね。求人件数が少ないと、仕事してないんじゃないか、税金の無駄遣いとか、何かと世間体が悪い。

「受付の段階で断ってもらっていいですから、とりあえず出しておいて下さいよ、お願いしますよ」

たぶん、予め手打ちがある。





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?