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桜の季節

フィクションかノンフィクションか。
ちょっとしたお話を書くことにする。


この頃の季節になると
肌にあたる風の感覚でいろんなことを思い出す。


春のこの風があの頃の私の記憶を
毎年呼び起こす。


たぶんお互い年もとって
当時とは随分違ってるんだろうけど
あの頃を思い出すだけで
ほっぺの奥がきゅうっとなる感じは
いまだにすぐそこにある。



ある年の3月の終わり
私は失恋をした。


お互い大好きだったのに
うまくいかなかった。


タイミングも気持ちもすれ違ってしまって
お互い大好きだったのに
別れるという決断をした。



ちょうどその頃
aikoの歌が流行っていて
その歌詞がその時の自分を照らしているようで
なんとも悲しくて仕方がなかった。



失恋は、だいぶ傷が深いと思われたけど
すぐに次の恋が見つかって
私はそんなに落ち込むこともなく
失恋の傷はあっけなく癒えた。


若い時なんて
そんなもんだ


それはあまりにも突然で
泣いたカラスがもう笑った状態。


でも本当に悲しかったのだ。
その時が来るまでは。


私は運命的に恋に落ちた。
出会ってから恋人になるまで
そんなに時間はかからなかったし
あんなに好きだった先週までの恋人のことは
すっかり忘れてしまった。


こんなもんだ。


その子は横顔が本当に綺麗で
私のコンプレックスを一緒にいるだけで
全部帳消しにしてくれる感じがした。


背も高くてスタイルも良かった。
顔も当然だけど
ふわふわの柔らかい髪の毛や
ちょっと独特な声も
大きな綺麗な手も私の好みだった。


一緒にいると必ずすれ違う女の子が
その子を見るために振り返った。


わたしもその子の顔を
そばでずっと見ていた。


幸せだった。


その子と3月の終わりに恋人になってから
1日も欠かさず毎日過ごした。


桜が咲いてた公園や
桜が咲いてた川のほとり。
桜が咲いてた街中や
桜が咲いてた坂道。


5分咲きから7分咲きになり
満開になってひらひらと
桜が舞い散るずっとその間
一緒にいた。


私はその子が好きだった。
その子も私が好きだった。


それは本当に確かにそうだった。


歩いたり立ち止まったり
話をしたり笑ったり


その度に桜がひらひらと私たちを包んで、
春の風が私たちの肌を撫でた。



その温度がずっと時間がたった今も
私の記憶を思い出させる。


そのあとは
決していい思い出ばかりではなかったし
今は別々の人生を歩んでいるけど
あの時の
あの桜と、春の風は優しくて
今でもこの季節になると
私をあの頃に連れて行ってくれる。


やっと言えるかも。
楽しかったよ。
ありがとう。


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