パレットに滲む絵の具の黒に似た涙が伯父の遺骨に染みる 春風をふくみふくらむカーテンに包(くる)まる君の顔の小ささ 孫たちがおはじき弾く音を背に船漕ぐ祖父の小さな背中 花筏(はないかだ)すら見ぬ伯母の目に留まる桜を描く無心の零時 「神様はいるの?」と天を仰ぎ見る子の足元の雀の巣箱 最終のバスを逃した我が足をファイトと四度叩くイキシア 芍薬を和紙のように透かし見て春陽麗和(しゅんようれいわ)に指が震える 躑躅花にほふおとめが蜜を吸ふ 花を千切れぬ我を憂ひて そよ