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風前の灯火である故国に命がけで恋をした ドラマ「ミスター・サンシャイン」 #383

韓国で映画やドラマを制作する際、最もつくりにくい時代が朝鮮王朝の末期から第二次世界大戦頃なのだそうです。理由はシンプル。

セットにお金がかかるから!

いっそ時代劇の方が、民俗村を撮影に使えるので簡単なのだと聞いたことがあります。この時代のソウル(当時の呼び名だと京城)は、路面電車が走っていたり、韓屋ではない建物が増えていたりしたため、再現するにはお金がかかる。おまけに国を失う時代なので、明るいストーリーにもできないでしょうしね。

また、日本統治時代に入ると、当然、日本人も、日本語を話す韓国人も登場することになります。

ここがビミョーで。

日本人役には日本人の俳優をキャスティングしてほしいなと感じてしまう。たとえば映画の「暗殺」は、とても緊迫感があってよかったのですが、日本人がつたない日本語で話すシーンがあると、ちょっと気持ちが逸れてしまった……。

ドラマもあまりないかもと思うのですが、キム・ウンスク脚本家とイ・ウンボク監督というゴールデンなコンビで挑戦していました。それが「ミスター・サンシャイン」です。豪華なキャスティングで描かれる歴史絵巻のようなドラマで、現在、Netflixで配信されています。

<あらすじ>
1871年、米国は朝鮮との国交正常化を要求し、海岸線を砲撃。主人宅を出奔した9歳のチェ・ユジンは米国海兵隊の軍人を頼り、アメリカに渡ることになる。同じ頃、最下位階級である白丁の息子として生まれたク・ドンメは故国を捨てることを決意し、日本へと向かう。その日本に留学していた資産家の息子キム・ヒソンは、許嫁との結婚のため呼び戻されることに。
朝鮮時代の最高名門家であるコ家の娘エシンは、国のために義兵として闘う意志を固める。スナイパーとなって初めての任務に赴くが、そこには黒ずくめの男がおり……。

国の精神的支柱である貴族の娘として、気高く、誇り高く、高潔な姿をみせるエシン。演じているのはキム・テリです。とにかくかわいくて、美しい。そして顔が小さい。

英語の意味も知らないまま「loveをいたしましょう。わたくしと」なんて言っちゃう、絵はがきのようなシーンもありました。

ミスターサンシャイン4

(画像はIMDbより)

彼女に恋する男たちは3人。故国を捨ててアメリカ人になった朝鮮人のユジン。故国を捨てて日本人になった朝鮮人のドンメ。そして、彼らの故国で一番の資産家であり、力をもつ家門の跡取りであるヒソン。

彼らは政治的に対立するだけでなく、「運命の女性」であるエシンを巡っても対抗心を燃やします。なのに、不思議な友情が芽生えちゃうんです。

ミスターサンシャイン3

(画像はIMDbより)

アメリカに渡った朝鮮人ユジンを演じているのが、イ・ビョンホンです。彼は1970年生まれなので、1990年生まれのキム・テリとは20歳の年齢差があるんですよね。ふたりは、お互いの正体を怪しみながら惹かれ合っていくのですが。

なぜ、こんなに年齢差のあるキャスティングを?

そんな疑問を持たざるをえません。9年ぶりにドラマに復帰するイ・ビョンホンで話題を作りたかったのかもしれませんが、彼は不倫スキャンダルを起こしたばかり。この年齢差の恋愛ストーリーへの出演には、批判も起きたのだそう。

考えられるのは、イ・ビョンホンの語学力かなあと思います。

この時代、ソウルの町を闊歩しているのは、朝鮮人ばかりではなく、日本人・中国人・アメリカ人・ロシア人たちもいます。その中で「アメリカ人将校」であるユジンを演じるためには、普通レベル以上の会話力が必要だったから。

とはいえ、ドラマの中では男たち3人とも「日本語に堪能」という設定です。「がんばってるね」レベルなのは仕方ないとしても、日本軍役はもう少しなんとかしてほしかった。

日韓併合直前の朝鮮は、列強の支配に対抗しようとする勢力、大きいものに巻かれて身の安全を図ろうとする勢力で混沌としていたといわれています。王朝内の足の引っ張り合いもあって、弱体化は避けられなかったのかもしれません。

それでも、風前の灯火である国家を、民族性を、言葉を守りたい。

故国への複雑な想いはありつつ、立ち上がった人々の絆が見どころです。主要なキャラクターだけでなく、周辺の人物ひとりひとりにまで、プライドと命をかけた戦いの見せ場をつくっています。映像の美しさもあって、ラストがとても感動的でした。とにかくキム・テリがかわいくて、美しいから。そして顔が小さい。

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