異人と同人

※追記あり! お気に入りが見つかる福袋 同人誌「異人と同人」 #147

11月24日に開催された第二十九回文学フリマ東京で、書くことを仕事にしている12人の方が集まって作った雑誌「異人と同人」を手に入れました。

※追記:2020年2月23日。文学フリマで発生した、ホントにちょっとした重大問題が解決したような気がします。解決していない気もします。最後の部分にそのレポートを追記しました。

フリマ会場のオープン直後であり、わたしがお客さん第1号であり、ブースに本を並べていたところだった浅生鴨さんは、お手伝いの方が寝坊して遅れているという話をしながらてんてこ舞いのパニック状態。「よかったら、本を並べるくらいのお手伝いはできますよ」と声をかけるも、「ダイジョーブ、ダイジョーブ」とあんまり大丈夫そうに見えない雰囲気で、雑誌を渡してくださいました。

大好きな方の文もあり、初めての出会いもあり、すべてが当たりの福袋を手に入れた気分です。

今回はその「異人と同人」の中身をご紹介していきます。

〇目次(お名前の後ろのアカウントはTwitterのものです)
「月とマグニチュード」古賀史健 @fumiken
「商業誌では書けないこと」小野美由紀 @Miyki_Ono
「わかるはわける」浅生鴨 @aso_kamo
「アサシン」ゴトウマサフミ @goto_masafumi
「テクスチャー」山本隆博 @SHARP_JP
「うちゅうじん さぶろうさん」田中泰延 @hironobutnk
「ずっと目の前にいる」スイスイ @suisuiayaka
「ホイッスル」浅生鴨 @aso_kamo
「すこしは写真の話を」幡野広志 @hatanohiroshi
「漢字ができるまで」ゴトウマサフミ @goto_masafumi
「クロースアップ・エッセイ」永田泰大 @1101_nagata
「イット」ゴトウマサフミ @goto_masafumi
「縦に裂きたい」燃え殻 @Pirate_Radio_
「ロックンロール・イズ・デッド」古賀史健 @fumiken
「ぼくのおばさん」高橋久美子 @kumikon_drum
「シチュエーション」ゴトウマサフミ @goto_masafumi
「スヌード」川越宗一 @kawagoe_soichi
「いつもは」浅生鴨 @aso_kamo
「悲しき結末」ゴトウマサフミ @goto_masafumi

「月とマグニチュード」古賀史健 @fumiken

やわらかくてもの悲しいポエムのような短編。
わたしは地震の数分前に“なにか”をキャッチしてしまう方なので、“彼女”の涙の理由を想像してしまう。

「商業誌では書けないこと」小野美由紀 @Miyki_Ono

ホントに“商業誌では書けないこと”の山でした。笑

昔の恋の思い出を真空パック状態で美しく書けるのって、男の人の特権な気がするな。

同意!
燃え殻さんや辻仁成さんの名前が挙がっていますが、平野啓一郎さんを加えたい。

「わかるはわける」浅生鴨 @aso_kamo

「わかるぅ~」という言葉があふれる時代に、「わかる」ってなに?という問いかけです。「わかる」の実感は、どこから来ているんだろうと考えてしまう。

「テクスチャー」山本隆博 @SHARP_JP

シャープさんこと山本隆博さんの小説は、前回のフリマ同人誌「ブンガクフリマ 28 ヨウ」にも掲載されていました。
今回の小説は、ターンテーブルの上にレコード以外のモノを乗せて再生する男の話です。サランラップや紙が電気信号に変換されて音となって部屋に広がる。古い写真が奏でる音楽を聴いてみたくなりました。(本にあったまま書いちゃいましたが、アカウント名はシャープさんでいいのだろうか?)

「うちゅうじん さぶろうさん」田中泰延 @hironobutnk

荒井由実の名曲「やさしさに包まれたなら」を彷彿させる作品です。ひろのぶさんの“やさしさあふれる笑顔”に包まれた気分になり、鴨さんの“やさしさ”にパフパフと包まれた気分を堪能できます。

「ずっと目の前にいる」スイスイ @suisuiayaka

実はスイスイさんの文を読んだのは初めてでした。cakesで「メンヘラ・ハッピー・ホーム」というコラムを連載されていたそうです。

「ずっと目の前にいる」は、失恋したばかりの女の子と、身長185センチの笹谷のひと夏お話。
笹谷は“生きている感じ”が薄くて、ユーレイなんでは、妄想なんでは、とドキドキしながら読みました。

「ホイッスル」浅生鴨 @aso_kamo

サッカー部の一年生・亮太は、水撒き時にホースを押さえる係をしています。必死に蛇口とホースを握っているところに、テニス部の丸岡さんがやって来て、うっかりホースを離したとたん、世界から人も、音も消えてしまう。

耳に響くホイッスルだけが現実なのか、ホイッスルこそが幻想なのか。心の重荷が、夏の日差しにあぶり出されたような小説。

「すこしは写真の話を」幡野広志 @hatanohiroshi

幡野さんがお子さんに語る、写真のお話。カメラの選び方、レンズのこと、どれも正解はなく、「ぼくはこうしていたよ」と語る口調がとてもやさしいです。

これが絶対と鵜呑みにしないこと。

本当の自分の好きを大切にすること。

そして、肉眼でもしっかりみること。

カメラバッグにしまったままのカメラを持って、久しぶりに出かけてみたくなりました。

「クロースアップ・エッセイ」永田泰大 @1101_nagata

好き好き好き好き!
永田さんが「クローズアップ」しているのは、ローマ字入力です。これ以上ないくらいに「細かい話」ですが、ただ「主人公」と打つ行為が、こんなにもドラマチックになるなんて! フリック入力では味わえない世界。他にも納豆、落花生の「細かい話」も。

「縦に裂きたい」燃え殻 @Pirate_Radio_

日々の暮らしの中で少しずつ溜まっていくモヤモヤを、時にはそーっと、時には大胆に「縦に裂く」独り言のようなお話。

たったいま、縦に裂きたくなる出来事がありました。

いまはランチタイム。銀鮭定食を食べながらスマホでnoteを書いています。手は二本しかないので、雑誌は、お箸やナプキンが入っている篭で押さえておりました。「失礼しまーす」とお店のお姉さんが来て、篭を持ち上げます。雑誌がパタンと勢いよく閉じます。角がトレイに当たって味噌汁がこぼれます。白のセーターに飛びます。「なんでもありませんでしたー!!」と去って行くお姉さん…。なぜ篭を持ち上げたのか? えっと、縦に裂きたい。

「ロックンロール・イズ・デッド」古賀史健 @fumiken

シビックで旅をする二人の若者。二百本以上のカセットテープを次々とかけています。マイケル・ジャクソン、U2、ボブ・ディランが流れ、行き着く先は?

これは古賀さんの少年時代なのかなーと読みながらニヤニヤしちゃいました。砂ぼこりとねっとりした汗を感じる小説です。

「ぼくのおばさん」高橋久美子 @kumikon_drum

僕と、変なおばさんの物語。僕はいつも、恥ずかしがり屋のおばさんを守ってあげているつもりだったけど、おばさんの意外な一面を見てしまい…。

おばさん、かわいい! 町外れの一軒家で行われるライブがハチャメチャで楽しそうです。

「スヌード」川越宗一 @kawagoe_soichi

バレンタインにチョコレートをもらった「僕」は、お返しに「スヌード」をリクエストされます。「スヌード」って!? 謎を解くべく買い物に出た「僕」を待ち受けていたのは、この世界に隠された壮大な秘密でした。

いやー、もうタピオカは飲めない!

「いつもは」浅生鴨 @aso_kamo

体調不良の主人公は、気分を変えようと散髪屋さんへ。「いつもみたいな感じで」カットしてもらう、というお話。

わたしは美容師さんと話をするのが苦手で、いつも言われるままに「はい、はい」とうなずくだけなんです。されるがままになっているわたしを高いところから見下ろしたら、こんな感じなのかも。

「アサシン」「漢字ができるまで」「イット」「シチュエーション」「悲しき結末」ゴトウマサフミ @goto_masafumi

ゴトウさんの1コマ漫画が5編載っています。めちゃくちゃ笑いました。「イット」「シチュエーション」が特にお気に入り。

目次にはありませんが、鴨さんのおもしろマンガ「あいつはラガー」も収録されています。

文芸誌を買わなくなってどれくらい経つんだろう。いろんな味の作品を一度に味わえる雑誌の良さ。久しぶりに感じることができました。書くことを仕事にしている人たちの作品を、わたしごときがあーだこーだ言うなんておこがましい、恐ろしい……と震えながらこのnoteを書いています。拙い感想ですが、購入を迷っている方の参考になればうれしいです。

「異人と同人」は浅生鴨さんのHPから買うことができます。まだ読んでない! この人はどんな文章を書くんだろう?と感じた方は、ぜひ!


最後に小さな声で告白します。

この本、1冊2000円+税でして、わたしは3冊買いました。1万円札を出して、4000円のお釣りを受け取ったような気がします。

……。

消費税払ってない!!! すみませんでした!!!


☆☆☆☆☆ここから追記☆☆☆☆☆

2020年2月23日。上に書いた「消費税未払い問題」が無事に解決!?

ご報告します。

2月22日〜24日のあいだ、渋谷パルコ8階にて<ほぼ日の学校Presents「本屋さん、あつまる。」>が開催されています。

3日間限りですが、「おもしろい本屋さん」が8店舗もそろうらしい。しかもTwitterで見る限り、かもさんもお店にいらしている!!!

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出不精で週末はほとんど家から出ないのに、外出が不安視されている時期だというのに、この機会を逃してはいけない気がする。

行かねば。お金をお支払いしなくては。

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来ました。

ほぼ日ブースの隣というか、離れ小島のような席で浅生鴨さん発見。お客様とお話中だったので、いったん他の本屋さんへ。

戻ってくると、ひとりでポツンとしていらっしゃる!!!

(勇気を出せ! 話かけろ!!!)

こういう大事な時ほど人見知りが激しくなる。いったん他の本屋さんへ。

戻ってくると、お客様とお話中だったので、もう一度他の本屋さんへ。

なにしろおもしろい本屋さんばかりなので、めちゃくちゃ楽しい。あちこちのぞいて回り、買物をして、店舗を5周くらいしたところでふと見ると、かもさんはおひとり! 勇気を出すなら今だ。

まめ「あの、『伴走者』の文庫本をお願いします」
かもさん「はいはい。えーと、680円の税だから……748円です」

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ま「800円あります」
(いや、違うやろ)
か「えーと、お釣りが……。分かんないから700円でいいです」
ま「いやいやいやいや。よくないです」
か「いーのいーの」
ま「あの、先日の文学フリマに行ったんですけど。「異人と同人」を3冊買ったのに消費税を払ってない気がするんです。いま一緒に払ってもいいですか?」
(やった! 言えた!!)
か「あ、そうなの? えーと、じゃあ、800円もらっときます」
ま「いやいやいやいや。たぶん足りないと思います」
か「うーんと、計算が……」
ま「えーと、計算が……」
か「800円でいきましょう。ダイジョーブ、ダイジョーブ」

なにが大丈夫か分からないまま、800円をお渡しして、サインまでいただいてしまいました。

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帰ってから落ち着いて考えてみました。

「異人と同人」1冊2000円+税×3冊。
『伴走者』680円+税=748円。
支払ったのは6800円。

明らかに……計算がおかしい? 算数ができないってつらい。

かもさん、いつか「548円」お返しします!!!
(計算合ってる?)


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