ヒョンビン初の悪役!骨太の心理サスペンス 映画「ザ・ネゴシエーション」 #97
2019年の夏はひとりで「ヒョンビン祭り」をしておりました。ドラマが活動の中心だったヒョンビンが、昨年は2本の映画に出演。日本でも続けて公開されたからです。
韓国のMBCドラマ「私の名前はキム・サムスン」で一気に人気俳優となったヒョンビン。共演したキム・ソナのことを“運命の女神”のように感じていると話していたこともありました。
そう。“運命の女神”です。「ヒョンビン祭り」で対照的な映画を2本続けて観たことで、ヒョンビンを輝かせるものがなんなのか分かりました。
それは、強い女です。
まずは1本目、息もつけないようなスピードで展開する、骨太の心理サスペンス劇「ザ・ネゴシエーション」をご紹介します。
<あらすじ>
ソウル市内で外国人による立てこもり事件が発生。ソウル市警危機交渉班の警部補・ハ・チェユンが現場に向かいますが、交渉中に人質と犯人の両方を死なせてしまいます。責任を感じて辞職を申し出た彼女のもとに、あらたな事件発生の知らせが。タイのバンコクで、ミン・テグと名乗る男がチェユンの先輩と韓国人記者を拉致。交渉相手としてチェユンを指名してきたのです。動機も要求も不明のまま、交渉にあたるチェユン。特殊部隊突入までのタイムリミットは14時間!
ヒョンビン初の悪役との触れ込みどおり、国際犯罪組織のリーダーであるミン・テグを、ヤバい男感満載で演じています。彼が交渉相手として指名したチェユンを演じたのは、ソン・イェジンです。
ソン・イェジンは、映画「私の頭の中の消しゴム」をはじめ、泣き顔・はかない顔・憂い顔が得意な女優……。だと感じていたので、誘拐事件の「ネゴシエーター」って、ちょっと弱くないんだろうか?という点が一番の不安でした。でも映画を観て、それが杞憂だったと分かりました。
このふたりのガチ対決が一番の見どころです。
警察組織に属するチェユンには、組織の論理や縄張り意識、女を低く見る輩と闘いつつ犯人と交渉するという、とても難易度の高いミッションが課せられています。おまけに犯人の「目的」が不明なので、条件の引き出しようもない。そんな中でも強気に攻めの姿勢を崩しません。
この、「強気で勝ち気で強い女」との対立こそ、ヒョンビンの演技を伸ばしてくれるのだと思います。
「私の名前はキム・サムスン」のキム・サムスンも、中身は乙女だけど口が悪い女の子でした。
男女で身体が入れ替わってしまうことによって巻き起こる人間模様を描いたラブコメディ「シークレット・ガーデン」は、相手がスタントウーマンという役柄上、肉体的な強さも兼ね備えていました。
細身で地味顔なせいか、これまでは「心に傷を持つ御曹司」役が多かったヒョンビン。悪役をやるにはどうしても迫力が足りないように思っていました。ですが、その弱点をチェユンがグリグリ突っ込むことで、「イカレタ男」感を出すことに成功しているのです。
これまでのイメージをいい意味で裏切ってくれたキャスティング、テンポよく進むストーリーと、鑑賞前の心配が吹き飛ぶいい映画でした。形勢が二転三転するので最後まで目が離せませんよ。
人質との交渉にあたるネゴシエーターは、心理テクニックと胆力が必要な仕事です。わたしはサミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーが共演した「交渉人」が好きでした。
ネゴシエーターに求められる“傾聴”の力は、コーチングでも必須の技術です。興味のある方は、『逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せ』がおすすめ。
トラウマを抱えながらも、チェユンがあえてとる強気な交渉術は、「あなたと対等なパートナーとして、わたしはあなたの意見を聞きますよ」というメッセージを伝えることができる技術です。難しいけど、相手の信頼を勝ち取ることが何よりも大切。こういうテクは覚えておきたい。
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