暗黒童話

史上最高のあとがき 『暗黒童話』 #214

「かわいいー!! 日本はいいよね~」

韓国人の友人に言われた言葉ですが、クール・ジャパンなアニメグッズに対してではなく、“文庫本”を見ての発言です。

韓国の本って大きくて重いんです。今では“文庫本”くらいのサイズの小さな本も出版されるようになりましたが、小説やエッセイなどの本はどれも単行本より縦が長いくらいのサイズ。

日本では単行本、文庫、新書、B6判など、出版される本のサイズはさまざまです。なぜこんなに多様なのか調べたところ、編集部の主戦場にしてる判型や書店の本棚というものがあるからのようです。

小説の場合は単行本→文庫化のパターンが多いですが、早く読みたいから単行本を買う、すると文庫になった時、あらたに解説がついていたり、あとがきがついていたりするので、そちらも読みたくなってしまう。

商売うまいねー!

という気がしちゃいますが、わたしがこれまで読んだ中で史上最高のあとがきは、乙一さんの『暗黒童話』でした。

事故で記憶と左目を失ってしまった女子高生が主人公。臓器移植で死者の眼球を提供されますが、その左目がある映像を再生し始めて……というストーリー。

乙一さんのホラー小説は“痛覚”がないのが特徴だと思います。悲惨な状態に傷つけられても痛みがないので苦しみがないんです。『暗黒童話』は最後にあっといわせる仕掛けもあって、とてもおもしろいんですが、いまわたしが紹介したいのは、この文庫本についている「あとがき」です。

『暗黒童話』は、乙一さんにとって初の長編ホラー小説で、初の文庫化でした。はりきってゲラを読み直したものの、直したいところばかり。

ファミレスの中で乙一さんは頭を抱えます。目の前には、両親と一緒に食事する男の子の姿が。

オトナって大変だぞ。つらいよ。苦しいよ。小説家なんてヤクザな仕事に就くんじゃないぞ!!!

男の子に向かって語りかけるあとがきは、小説とのギャップも相まって、これまで読んだ中で最高のあとがきでした。

乙一さんは本名の安達寛高として、初の長編映画監督に挑戦。1月10日に公開されました。「シライサン」。観たいけど、かなり怖そう。


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