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“クソバイス”に反応しない方法 『呪いの言葉の解きかた』 #606

「めっちゃ久しぶりに、自分のためを行動したみたい」

現在Netflixで配信されている韓国ドラマ「こんにちは? 私だよ!」で、店長に抑えつけられていた主人公は、「いい人ぶって、自分を責めるように仕向けるのは止めてください」とタンカを切り、上のようなセリフを口にします。

もうペコペコしてばかりの人生とはおさらばだー!

とはいかないのがドラマなのですけれど、人生だって同じです。

普段の生活の中で何気なく発せられ、そうなのかと受け取り、ほとんどの場合「自分が悪いんだ」と思考停止してしまう言葉=「呪いの言葉」。会社で、家庭で、男女の関係で、同性同士ででも、呪いの言葉は発せられることがあります。

「呪いの言葉」による呪縛から解き放たれましょう、という本が、上西充子さんの『呪いの言葉の解きかた』です。

法政大学の教授で労働問題を研究してこられた上西さんが「呪いの言葉」に注目し、言葉を収集するために参考にされたのは、海野つなみさんのマンガ『逃げるは恥だが役に立つ』だそう。

わたしは超話題になったドラマさえ観ていないんですが、アラフィフの百合ちゃんに投げつけられる言葉に、百合ちゃん自身は反応しない。だから「呪いの言葉」からも、それによる「呪縛」からも、解き放たれていくとのこと。

百合ちゃんのような「呪いの言葉」への切り返し方を集め、サイトが立ち上がり、書籍化までされたという流れです。

「あなたのためを思って言ってるのよ」 

「君だって会社の一員なんだから」

「嫌なら辞めちゃえば?」

「母親なんだからしっかり」

言っている本人はよかれと思っているのかもしれません。でも、「クソバイス」でしかない言葉に反応しなくてもいい。大事なのは「相手の土俵に乗らない」ことだと指摘されています。

本では「労働」「ジェンダー」「政治」の三つに分けて、呪いとその解き方を紹介。逆に、心を支えてくれる「灯火の言葉」と「湧き水の言葉」も。これが、かなりウルッときます。

おもしろいなと思ったのが、家事労働はなぜ無償なのかという問いへの回答です。

なぜ母親が自分にタダで料理を作ってくれるのかと疑問に持たないで育った男の子は、その母親の役割を妻に期待するようになる。妻が無償で料理を作ってくれ、掃除をしてくれることを、当たり前のように考える。

はー、仕事でもプライベートでも、いまわたしを悩ませているのは、まさにこれかもしれない。

「呪いの言葉」は発する側が意識しているか、意識していないかに関係なく卑劣な言葉として届くのです。そこで「うっせぇわ!」と切り捨てることもできるけれど。同じ土俵に乗らず、呪いを無効化するためには、まず、呪い自体を自覚することが大切なのだと思います。もしかしたら、自分も呪いの言葉を口にしているかもしれないのだから。

ウェブサイト版はこちらです。



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