見出し画像

妄想リスニング#3 Thompson the Fox "Foxology" × Helloween "Dark Ride"

ラグタイムは1868〜1917年という短い期間を生きたキング、スコットジョップリンの音楽といっても過言ではないでしょう。
バウンスするメロディーとマーチのような2フィールを特徴とするこの音楽は、20世紀初頭に大流行し、まさにブラックミュージックの礎となりました。
流行の原因は、そのズレたようなタイム感にあったとは思うんですが、改めてこのラグタイムを聴くと、その要素には実はとんでもないことが含まれていることに気づくんです。

バウンスするメロディーのリズムにばかり耳がいくと見落としてしまう要素があります。
その要素とは、"クラシカルな歌い方"なんです。
旋律は非常に西洋音楽的で、そこにはのちに出てくるジャズのようなブルージーな要素はあんまり含まれていません。
曲全体の構成もクラシカルな要素が強く、しっかりとした型があります。
メロディーのリズムにはハネがあるんですが、低音はクラシックミュージックで聞けるようなバスドラムが意識されていて、地に足のついた2フィールで、マーチのようです。
今までにない、パラダイムシフトのような音楽なんですね。
言葉だけだと全然混じり合わない要素なんですが、実際の音楽になると絶妙なマッチングをみせます。
行進するような推進力と、弾みながらも優雅で明るいメロディーは、たくさんの人を魅力しました。

さて、今回の妄想は、手前味噌な話で大変恐縮ですが、僕もグループの一員であるコンテンポラリーラグタイムバンド、Thompson the Fox(きつねのトンプソン)と、よりにもよって全く真逆のところにいそうなドイツのヘヴィメタルキング、Helloweenのつながりです。

先に述べたようにラグタイムの推進力となる2ビートは、ヘヴィメタルではお馴染みのビートパターンですね。
そもそもラグタイムにはドラムは入っておらず、じゃあ現代において1900年のラグタイムを生まれ変わらせるにはどうするのが面白いのかと考えていました。
そこで思いついたのがヘヴィメタルだったんです。
ラグタイムは4/4拍子として捉えると、BPMが200を超えることもあるほど、実は演奏内容としては結構過激なんですが、いかんせん使用楽器が木琴にバンジョーにコントラバスと、出音が可愛かったりするもんだから、その激しさは伝わらないのが面白いところ。
そこに目をつけたんですね。

ヘヴィメタルの2ビートは、基本的にダブルバスによる高速でドコドコとスネアでのコンビネーションですが、それをおもちゃのように小さいドラムセットにタンバリンやヴィンテージのシンバルをつけて演奏するとどうだろうか、と思ったわけです。
思った通り、とっても軽やかでかわいい音に、、、。
でも、やってることはハロウィーンのような高速2フィール。

そして、この2者に見る面白さは、メロディーがとても美しく、ポップであるということ。
トンプソンは軽やかな木や弦の音が響く一方で、ハロウィーンはディストーションで歪んだエレキギターと重たい金属のような音。
そこには違いはあるけれど、どちらもその核にポップな楽しさを秘めています。

"Foxology"には今風の凝った拍子がたくさん出てきますし、"Dark ride"には重たい音ながらも疾走して浮遊感のある爽快なメロディーがたくさん入っています。

ラグタイムは軽いし古い!って思ってませんか?
ヘヴィメタルはうるさくて重たい!って思ってませんか?
どちらかが好きになれたなら、どちらも好きになれるかもね!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?