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ゾンビの光 ⑥

話しが長くなってますね。

いつもです。



はい。

すみませんでした。

***************

そして
またゾンビになりましたよ。

補修職人を一年半くらい
続けたでしょうか。
体力的に無理だから
繁忙期の春が過ぎたら
辞めたい。
そう告げていた頃でした。

仕事中、宇宙人(父親)から
何度も電話がかかってきます。
出られないし
出ませんよ。

「酒買ってきてくれんかなあ〜」
猫撫で声留守電。

「。。。」
無言留守電。

「電話にでらんか!!」
怒鳴り留守電。

「死ね」
、、、留守電。

とか。

行方不明
警察からの電話
泥酔状態で発見(路上)される。

などがあったので
職人仲間も
「また、どっかでぶっ倒れてんじゃ
ねーのー」
みんなで笑ってましたが

警察からの電話。
笑えませんでした。

繁忙期のピークは過ぎていましたが
忌引きとして休みもくれて
失業保険が出るように
会社都合で辞めさせてくれた
当時の社長は
実写版ジャイアン即決されそうな
見た目はジャイアンでも
死ぬほどやさしい神でした。

葬儀の後
ドタバタの時期が終わる頃
また、ゾンビになってしまいました。

ゾンビピーク ?
からは、数年経っていたので
メンタルがほぼ終了しました。

とにかく、人生で最高に
参ってしまっていました。

友達達は仕事があるか
家庭があります。
サポートをお願いできる人は
ひとりしかいませんでした。

Zに一生頭が上がらなくなる
別にそれはいいけれど
関係性に変化が起きるだろう
どんな変化なのか
全く想像できない

迷いました。
でも、頭が全然回らないのです。
腐れ縁みたいな宇宙人は
宇宙に帰ってしまったのです。

そもそもどうしても
この世界に居たい
生きていきたい
自分にはそれが
とても希薄でした。

とにかく
もういっそ自分も
そればかりです。

しんどい
どこまで、どの程度悪化するか
怖い
もし次に同じ状態になったら
絶対に耐えられない
かつてのゾンビ時代に
思いました。

まさかの
ゾンビ再スタート
もう何もわからない。
とにかく楽になりたい。

彼女には、自分に出せる
精一杯のお金を支払おう
「助けて」
伝えた時に決めていたのは
それだけでした。


Zは予定よりずっと早く
イギリスから帰国していました。
向こうで病気になってしまったのです。
まだまだ英語が不慣れな中
症状をうまく伝えられないことから
十分な治療もうけられず
泣きながら
国際電話がかかってきたことも
ありました。

とはいえ。
帰宅後すぐに、
地元から離れた別の場所に
農業留学?していました。

Zはとても料理が上手でした。
調理師免許も取得済みです。
実家に帰ることが
許されなかった彼女は
農業留学の道をみつけました。
農業を学ぶことを条件に
住まいが提供されるというもの。

料理好き。
そして身体に入れるものに
とても気を遣っていた彼女は
おいしくて、身体にやさしく、
身体を元気にする野菜。
無農薬有機栽培に
昔から興味があったのです。

「すぐ行く」
遠く離れた場所から
Zはかけつけてきてくれました。
農家さんは事情を話すと
快諾してくれたそうです。

過去の病院勤務
自身の長い病弱キャリア
料理の腕
すべてが合わさった
彼女のサポート、看護は
完璧でした。

トルーマン・カポーティの
小説に出てくる
ベルベットの薔薇の飾りが
あまりにも素敵なので
思わず自分で作った
手作り薔薇つき麦わら帽子。
一度も身につけて外出など
したことのない帽子。

わたしの部屋にあった
その帽子を
失業保険手続きに送り出す際
「是非に」
彼女は強く勧めました。
嫌がるゾンビに
「最高に痛々しいので是非」
承諾しました。

確実に
彼女はわたしの操縦法を
身につけつつありました。


  麻薬って知ってるよ
   効かないよ
   効くわけないよ




農業留学先で
彼女は農業だけを
していたわけではありませんでした。

ネットで婚活を始めていました。
身体の弱い自分が
単身自力で生きて行くのは
現実的ではない。
出産もしたい。
今しかないと。

候補は既に何人か。
わたしの看護中も、
そのうちの2人くらいと
直接会うと出かけて行った。
もちろん
わたしに不自由がないよう整えて。
泊まりはせずに
しかし
夜の相性も、、、確認して
彼女は帰宅しました。

Zのおかげで症状は
随分よくなりました。
もちろん、それなりにまだまだ
症状はあったけれど
身の周りのことや、
料理をできるくらいには
回復していました。

食事の内容、調理法、タイミング
身体を労わる生活に必要な
様々なことを彼女から教わりました。

ほんとうにありがたかった。
そして、彼女の生きてきた時間に
散りばめられた
不十分な身体を最大限に労り
そして可能性を伸ばしたり
大切に生かしたりする知恵を
彼女はひとつひとつ
自力で獲得し、吟味し
継続してきたすべてを
心底尊敬しました。

ほんとうにすごい人だ!!

農業留学の地へ戻り
ほどなくして
彼女は結婚することになりました。

遠くへ引っ越すという。
結婚式へ是非来てほしい
とのことでした。

  麻薬って知ってるよ
   効かないよ
   効くわけないよ


わたしを看護してくれた時
「ひとりより、
みんなであなたを支えた方が
いいと思う。

Aちゃんや弟君の連絡先を
教えて欲しい。」

別の人から
「今後は何か困ったことがあれば
わたしではなく
Zに連絡するように言われた。
何がどうなっているのか
よくわからないが、とにかく怖い」
Aちゃんが言っていたと聞きました。

わたしはAちゃんとは
連絡が取れなくなっていました。


〈つづきます〉




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