子どもの気持ちが見えたなら:子育ての後悔と今なら出来る事
1 娘の苦悩の始まり
6年間同じクラスの中高一貫校に通い始めた娘の最初の涙を見たのはちょうど、新緑がまぶしい季節でした。
買い物に出かけようと地下の駐輪場に降りたら、振り出した雨に濡れた制服姿の娘と出くわした時です。
その頬にうっすらと流れていた涙は、最初、雨かと思い「お帰り!」と明るく声をかけました。
「学校に楽しく通っている」とばかり思っていたから。それなのに娘の涙は本物で、そこから娘とクラスメートの子達の複雑で長い闘い、娘の苦悩は始まりました。
2 しなければ良かった事
当時、家庭科の仕事で忙しかった私は何か問題があるなら早く解決したいと涙の原因を聞きただし一緒に解決法を考えようと必死でした。
母でる自分がリーダーシップをとり、娘に行動させれば大丈夫と浅はかにも信じていたのです。
それは娘にとっては最善の策ではなく、娘とクラスメートとの関係は表面上は穏やかに見えても娘は透明人間として扱われ、学校生活は彼女にとってつらいものとなりました。
その後の数年間、娘は髪を染めたり、よくわからないバンドにはまったりして問題行動を起こし指導される事になります。
今、社会人になってからも人間関係に自信を持てない娘を見て「あの時に戻れるなら自分に何が出来ただろう?」そう思う時があります。
3 答えが出なかった問い
娘が何かで悩む姿を見ると、あの時「もっと娘の気持ちに寄り添い、ゆっくりと気持ちを聞けば良かったのか」と苦い気持ちになります。
・中学受験を経て入ったばかりの私学を
辞める事は将来があまりに不安。
・今さら公立の中学に転学はしたくない。
・かといって今のままで6年間も
耐えられるか分からない。
当時、娘に家で何度話を聞いても話をしても堂々めぐりだったあの頃。同じ所をぐるぐる回るだけで「どうすればいいか?」「本当はどうしたいのか?」分かりません。
「娘の本当の気持ちが見えればいいのに」と何度も思った事を思い出します。
4 今なら出来る事
そんな昔の事を思い出していた時、今仕事で使っている「進化思考」の本が目に入り、これで子どもの気持ちを考えたらどうなるのだろうと考えました。
進化思考は大きく2つのプロセスに別れていて変異と適応という2つのプロセスを螺旋のように繰り返しながら思考していく思考方法です。
この変異の9つの視点や適応の4つの観点から、当時の娘への対応などを考えていくと今なら出来る事が見えてくるかもしれないと思ったのです。そして、それが思春期の学校生活で悩むお子さんやその保護者の方々に参考にしてもらえれば娘のような思いをする子が1人でも減るのではないかとも思いました。
5 考え方を変えて見えて来た事
最初は【変異】の9つの視点で考えてみました。娘への問いかけの形にしています。
・欠失:学校生活から失くしても困らない事はどんな事?
・増殖:学校生活でもっともっと増やしたいものは何?
・変量:学校生活の中で何かにかかる時間や労力を変えられそうな事はどんな事?
・擬態:本当は「どんな学校生活」が送りたい? ~みたいな学校生活の~に入れるとしたら、どんな言葉?
・交換:今の学校以外で勉強するとしたら本当はどこがいい?
・移転:何かをそっくり入れ替えるとしたら何を移したい?
・分離:今離れたいのはどんなものから?どんな事から?
・融合:学校生活の中で何かをまとめたりくっつけたり出来るなら、どんな事やものを合わせたい?
・逆転:正反対に出来るとしたら何を正反対にしたい?
次は【適応】の4つの観点で問いをつくってみました。
・解剖:自分にとって学校って何?どんなもので出来てる?
・生態:学校って、どんな事とつながってる? 勉強やクラスメートは先生は何のためにいるの? それは自分にとってどんな意味を持つの?(これは無限に出て来そう)
・系統:そもそも学校で何から始まったんだろうね? どう発展して来たのかな? それは何のためだったのだろう?
・予測:このまま学校に行き続けたら、どんな未来が待ってる? もし行かなかったらどうなる?(ここは統計などの客観的に見る事が出来るをデータなどを取り入れたい所)
さらに、観点を変えてみると、こんな問いも浮かんで来ます。
どんな未来があなたの理想? そこにつながるにはどうすればいいの?
こんな感じで一緒にやっていけたら少しは娘の気持ちも見えて来たのかもしれません。
6 子育て中の皆さんへ
思春期の子どもが学校などの親の目が届かない所で問題を抱えた時、子ども達の本音を聞き出し、行動を促す事は本当に難しい事だと思います。
「なぜ、学校に行きたくないのか?」
「どうしたら行く気になるのか?」
「本当はどうしたいのか?」
親として子どもに直接聞いて、子どもの本音をただしたい事は、実は子ども自身も見えてなかったり、分かっていなかったりする可能性があります。
そんな時、こんなアプローチもあるのではと思った事をまとめました。
自分では出来ませんでしたが、少しでも子育てをしている皆さんの役に立てば幸いです。
〈終わり〉