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調理実習の指導で考えた事「見えない時間への対価」

「懐かしい!」
思わず声が出そうになった1冊の本。

在職中にお世話になった
家庭科の世界への恩返しの
気持ちも込めて
家庭科のコミュニティ運営を
始めるにあたり
改めて家庭科で使った教材を
整理している時に
出て来た「英語でかんたん和食」
という本です。

コロナ前
灘高に非常勤講師として
勤めている時
海外から生徒が短期で来る事になると
「英語の調理実習よろしくね」と
声をかけていただき
英語で海外の生徒達を対象に
調理実習をさせて
もらう事がありました。

その時の献立を考えるために
買った本です。

今思い出すと
その”声かけ”から始まる
準備と実習と片付けにかかる時間は
途方もないものでした。

でも学校から
支払っていただくお金は
実習指導分だけ。
その前後にかかる時間に
対価はいただけません。

家庭科の講師としていただく
お金に関していえば
非常勤講師で働く事が多かったので
公立では授業をした
時だけの時給払い。

私学は月給でいただきましたが
1年間の期限付き雇用契約で
身分は不安定。
基本は授業時間分だけに
対する時給なので
実習案をつくり準備をし、
試作をし実習を指導し、
片付けや評価などについては無給。

通常の授業に
比べて実習にかかる
”見えない時間”は
数倍にのぼります。
これは家庭科だはなく
実習などがある科目では
当たり前の事で
それを承知の上で仕事を
していましたが
時々
「何やってるんだろう?自分…」
と 思う事もありました。

だけど実習の時に
生徒達が見せてくれる
キラキラした瞳とか
満面の笑顔とか
ふともらす素直な一言とか
好奇心にあふれた表情とか
それはもう
お金を超えた贈り物。
とても幸せになれました。
なので仕事をしている時は
お金の事は
出来るだけ考えないという
習慣がついていったのです。

ところが
ある学校で通常授業以外に
調理実習をした後、
遅くまで残り片付けをしている私を
見かけた教頭先生が
「こんな時間まで作業してるの?」
と今まで誰も気づいて
くれなかった事に
初めて気づき
声をかけて下さったのです!

その時のうれしかった事と
言ったらありません。
さらに実習前後の時間にも
お金を払って下さる事になり
とても助かりました。

この見えない時間への対価は
私にとっては本当にありがたく
深く印象に残っています。

当時、私自身は授業でも実習でも
「もっと出来る事があるはず」
のループにはまり
自分の時間を
”見えない時間”につぎ込んで
自分をすり減らし
最後には親の介護問題も出て来て
退職を選んでしまいました。
「燃え尽き症候群」
「バーニングアウト」
まさに、その状況でした。

でも…
・自分が客観的に見て
    どんな仕事の仕方をしているか?
・その働き方は以外やり方はないのか?
・その時間の使い方で本当にいいのか?
こんな事を話せる同じ
家庭科の先生がいたら
違った人生の選択が
出来たかもしれません。

今、立ち上げている
家庭科の先生の
コミュニティが
一人でも多くの先生の心の支えに
ほんの少しでもなる事が出来、
《家庭科の先生》という仕事を
誇りに思いながら
楽しめる先生が増えたとしたら
とてもうれしく思います。

みらい家庭科ラボの活動は
下のサイトからご覧いただけます。
どうぞよろしくお願いします。

〈終わり〉