思春期ってやつ(2)

中学2年生の夏休み前だったと思う。
私は、クラスのいじめの標的になった。

といっても、
以前までいじめの標的だった女の子はそのままで
そこに私が地味に加わる感じだった。
あからさまに
物を隠されたり
面と向かって「きもい」とか言われることはなかったけれど
女子特有の「陰で、のけものにする」陰湿なタイプのそれだった。

お昼ご飯を食べる時
周りは机をくっつけて食べるのに
私は1人で食べていた。
思春期の私にとっては、なかなかに辛かった。
今まで普通に話していた子にも、急に距離を置かれるようになった。
挨拶しても無視された。
そして、絶妙に聞こえるような大きさの声で言われるのだ

「ハレさんって成績も良くないくせに、
 いい子ぶっててバカみたい」

誰も話す相手がいないので、
休み時間はいつも孤独だった。
特にすることもないので、図書室に行って
ひたすらに時間が過ぎるのを待った。
昔から、本を読むのは得意じゃないけれど
図書室とか、本屋さんという空間が好きだった。

夏休みに入って
塾の夏期講習が始まった。
通っていた塾には、同じ学校の女の子たちも何人かいた。
塾には、学習レベルごとにクラスが分かれていて
私は真ん中のクラスにいた。

ある日、
塾の近くで夏祭りが開催されることとなった。
休み時間になると、
同じ学校・クラスの女の子たちが
誘い合って、お祭りに繰り出した。

どうせ私は声なんてかけられないだろうなと思っていた。
すると「ねぇ、ハレさん。一緒に行かない?」
と声をかけられた。

私は、まさか誘われると思っていなかっただけに
驚いたと同時に、とても嬉しかった。
私のこと、覚えててくれたの?

5人ぐらいの女の子たちと共に、
私はルンルン気分で、お祭りへ向かった。
しかし、そこから問題が起こる。

いくつかの露店を周り
そろそろ次の授業が始まる時間。
周りの女の子たちは、まだまだ遊び足りない!とばかりに
次のお店へ行こうとする。
けれど、根が真面目な私には
授業をサボっちゃいかん、という気持ちがあった。
そして勇気を出して伝えた。
「ねぇ、そろそろ戻らない?次の授業始まっちゃうよ」

すると、その中でリーダー格の女の子が
「出たよ、いい子ぶりっこw
 じゃあハレさんだけ先に戻ったら?
 私ら、まだ遊ぶし。
 大して勉強もできないくせに
 授業だけ受けたって無駄でしょ?」
と言ってきた。
周りの子たちも、同調するように一緒に笑った。

私は、その瞬間、頭の中が真っ白になった。
何か言い返したい気持ちにはなったけど
言葉が出てこない。
どうしよう、
どうしよう、
そんな気持ちでいっぱいだった。

結局彼女たちは、私を置いてその場を離れた。
私は、塾までの帰り道、1人で歩きながら泣いた。

私って、やっぱり出来損ないなのかな?
大して勉強もできないくせに、
授業だけ受けて、
意味ないことして…

思春期真っ只中の私には、堪える出来事だった。
塾に戻ってからも、
彼女に言われた言葉が頭の中でぐるぐる回って
授業の内容は全然入ってこなかった。
授業が始まって30分ほど経った時
お祭りに行っていた彼女たちが帰ってきた。
先生は
「こらっ、授業始まってるぞ!
 お祭り気分なのはいいけど、来年受験なんだからな!」
と叱ったけれど
彼女たちは
「あはははは、めっちゃ楽しかった。
 やっぱりお祭り超楽しいね〜」
と言って、スルーしていた。

私は、とてもじゃないけど
彼女たちと目が合わせられなかった。
先に戻って授業を受けていた自分が
なんとも情けなく思えた。
大して勉強もできないのに。

家に帰ってから、
泣いた。
何が悲しいのか、悔しいのか、
この気持ちは一体何なのか。
これが、思春期ってやつなのか。

すると、1番上の姉が私の部屋にやってきた。
「どしたの?何かあった?」

1番上の姉とは7歳差で
その当時、有名国立大学の法学部に通う学生だった。
そして、ことのあらましを説明した。

姉は
「そっかー。
 でもさ、そういうバカって、まじで救いようないし。
 もうさ、相手しても仕方ないからさ
 見返してやったらいいのよ。
 何も言えないぐらい、勉強して成績良くなって。
 勝手に言ってれば?って。
 いつか気にならなくなるよ。
 高校に行ったらさ、今より広い世界で
 きっと勉強して、それなりに成績もよくなったらさ
 自分と同じぐらいのレベルの子たちと出会って
 そういうバカなこと言うやつなんか
 いなくなるから」
と言った。

私は
「でも、私はお姉ちゃんみたいに頭良くないよ。
 スポーツもできないし。
 きっと私は出来損ないだから」
と言った。

すると姉は
「やってみてもないのに、できないなんて言うもんじゃないね。
 私だって、こう見えてそれなりに努力して今のポジションまで来たし。
 やってみたら、できるんじゃない?」
と言ってきた。

私は、そのとき初めて
ちゃんと勉強してみようかな、と思った。
今まで向き合ってこなかった。
姉や兄と自分を比較すること、しかしてこなかった。
だから、自分自身とちゃんと向き合ってみようと思った。

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