「アンマーとぼくら」本を読んだ感想

「アンマーとぼくら」 有川 ひろ(著者) ☆4

 タイトルから「ああ、泣かせてくるタイプね」と思ったが案の定ラストでめちゃくちゃ泣いた。なんてステキなお母さんなんだ、なんてステキな家族なんだと。

 主人公リョウが母の休暇に付き合うために沖縄に里帰りしたというあらすじなのだが、のっけからリョウ自身の記憶が曖昧だったりして、この帰省、そしてこの家族なんかワケアリなんじゃ…。となる。

 具体的な展開は魅力が半減してしまうかもしれないので言及しないが、この謎の部分が物語後半まで続き、「え、今のどういうこと?」とついていけなくて正直もやもやするかもしれない。そこを「何か不思議なことが起きているんだな」くらいの軽い気持ちで読み進めれば、そのもやもやは解消し、きっと感動的な気分になるはずだ。

 僕は読み終えてから一番に思ったのが、ちゃんと親孝行しなきゃなということだ。でも親孝行って難しいよね。僕はまだ両親が健在だけど、親を亡くしてしまった人や、それをテーマにした作品では往々にして「もっと親孝行すればよかった」と聞く。

 頭ではそうじゃないと分かっていても、家族の存在が当たり前であり、時間がまだまだ残されていると考えてしまう面もあるだろうし、めちゃくちゃ親孝行を意識して日々を生きても、「もっとこうすればよかった」と考えてしまう面もあるのだろう。

 僕は犯罪者になった時点でとんでもない親不孝者なので、出所後はそれを取り戻すために全力を尽くすつもりだが、たぶん親が死んだときには「もっと親孝行すればよかった」って後悔するんだろうな。人生そんなもんで、これまでも世の中はそうやってまわってきたと思えば、それまでかもしれないが、まあそんなことはさておき、この物語で語られる家族ドラマはもちろん感涙ものだが、もう一つの見どころは何と言っても沖縄の描写だろう。

 この本では過去の回想をまじえながら、主人公親子が沖縄の名所、ご飯を楽しむ。それらの光景が詳細に描かれていて、さらに見どころや文化の成り立ちなどの解説も作品中で自然に語られているので、沖縄に行ったことある人は頭の中にその光景が浮かんでくるだろうし、行ったことない人もぜひ行ってみたいと思わされるはず。

 今度沖縄に行く予定がある人は、行く前に読んでいるといいかもしれない。個人的にこの本にキャッチフレーズをつけるとしたら「家族ドラマのかわを破った沖縄観光ガイド本」だ。

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