「青天の霹靂」本を読んだ感想

「青天の霹靂」 劇団ひとり(著者)

 「陰日向に咲く」に続く芸人・劇団ひとりの作品。主人公晴夫は売れないマジシャン。自分をずっと特別な存在だと思っていたけど、何かとうまくいかない毎日から自分への諦めを感じていた。

 ある日、警察から疎遠になっていた父が死んだと連絡があり、父がホームレスとして暮らしていたという場所を見に行くことに。

 そこでいきなり落雷にうたれ、気がつくと昭和48年にタイムスリップしてしまった。というのがあらすじだ。

 コントを得意とする芸人だからか、作品の内容はもちろん言葉の使い方やセリフの言いまわしが面白い。

 登場人物みんな一癖あるけど、一人一人が愛らしく、なんだか好きになってしまう。そして最後のメッセージ性の強いラストだ。

 人間誰しも晴夫のように、自分が何か「特別」な存在なのではないかと考えたことがあるだろうし、そして殆どの人が大人になるにつれて自分は「普通」、下手すれば「普通未満」の人間だと自覚していくんだと思う。

 でもそんな自分も実は誰かにとっては「特別」なのではないのだろうか。友人、恋人、そして何より自分を生み育ててくれた親。不幸な生い立ちをした人もいるであろうが、多くの人は “ 強く望まれて ” 生まれてきたのではないだろうか。

 僕は逮捕されて改めて自分の家族にとって「特別」な命なのだと気がついた。だから僕はその想いに応えるためにも精一杯生きていかなければならない。

 著者もそんなメッセージを伝えたかったんだと思う。読んでいてちょっと泣きそうになったけど、ラストのオチも芸人らしいもので笑顔になれる、そんな素敵な作品だった。

 ページ数も240ページ程で文章も読みやすい。本を読むのが苦手な人にも是非お勧めしたい。

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