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幸せのお手伝いをするということ


私はブライダルスタイリストをしている。
結婚式を決めて一番最初にする準備であるお衣裳選びのお手伝いを毎日している。

キラキラしたものが好きで、人とお話することが大好きだから私はきっとこの仕事か好き。
働くことは得意じゃないし、仕事も遅いから社会人は向いてないけれどきっとこの仕事が好き。


ご新郎新婦様と密に接しているのはやっぱりウェディングプランナーで、私たちスタイリストは衣装が決まったら当日は立ち会えない。

中にはすごく仲良くなって結婚式が終わってからお手紙を下さったり、おふたりの記憶の中に入れて頂けることもあるけどプランナーさんほどではないと個人的には思っている。

私は先輩のようにお客様の好みを瞬時に察知して提案したり、驚くようなコーディネートの提案はできないし貫禄?のようなものもない。
それでもお客様からしたら私はたった1人の担当スタイリストなわけで、どれだけ私に力がなくても私がきっと全てだから、せめて楽しい時間を過ごして貰えるようにとかやり残しがないように沢山着せてあげようとか私が出来ることは精一杯やっているつもり。


先日、私が担当しているお客様の結婚式の中止が決まった。

こんな世の中になってしまったから結婚式の中止や延期は珍しくない。きっとこの2年くらい沢山のご新郎新婦様が悩んで苦しんでいると思う。

そのお客様と出会ったのは4月頃で結婚式は2月に行う予定だった。優しくて落ち着いているけれどお話するとおちゃめな新婦様と超インドア(らしい)で笑顔が柔らかいとても真面目な新郎様。
挙式で白無垢を着て披露宴で色打掛、お色直しはウェディングドレス。「盛りだくさんですね!」なんて言いながら、優柔不断なおふたりと衣裳が決まるまで何度もお衣裳合せをした。

嬉しかったことが2つある。

1つ目は私の名前を呼んでくれること。
まだまだ私は記憶に残る接客をするのが出来なくて店員さんの1人にしかなれてないんだろうなぁとよく思う。「担当」である以上、お客様にとって特別になれるような接客がしたい。だから新婦様が私のことを名前で呼んでくれて、誰でもいい予約の電話でも必ず私を名指ししてくれるのが凄く嬉しかった。私はちゃんとおふたりの「担当」になれてるって勘違いかもしれないけど嬉しかった

2つ目は衣裳を決めた理由が「私」だったこと。
元々は和装はうちのお店決め、ドレスは他店で決める予定だった。そんな中で「いろいろ見てたら悩んでしまって、やっぱりお姉さんとドレス決めたいなぁと思って…」と相談のお電話を頂いた時は凄く嬉しかった。衣裳が素敵だからと決めてもらうことはあっても人で決めてもらえることなんて中々なくて、でも人柄でお客様を取る先輩が凄く羨ましくて憧れていたから。きっと一生忘れないくらい嬉しかったし、少し泣いた(笑)

自然と私の中でも大好きで特別なお客様になっていた。
もうすぐだったんです。
決まった衣裳の小物合わせを今週して、年が明けたら家族も連れてくるので一緒に見て下さい!ってお話してて、音楽は何をかけるとか準備が大変とか会うたびに進んでいる打ち合わせのお話を聞くことがすごく好きで、当日立ち会えなくてもとっても楽しみにしていた。


そんな中での「実は結婚式を中止にしようと思っていて…」という新婦様からの電話。
おふたりは医療従事者で、新しいコロナウイルスがまた広がるから出来なくなってしまった、と。
今まで担当したお客様の結婚式が延期になることはあっても中止は初めてだった。それに、そういう連絡は式場のプランナーさん経由で知ることが多いから直接話をするのは初めてだった。
プランナーさんから連絡が来てないなんておかしいな?と思いながら話を聞いていると「まだ会場には伝えてなくて、先にお姉さんに言わないとって思って…」という新婦様の言葉。

結婚式の中止やもうおふたりに会えないことが悲しくて、おふたりの苦しさが伝わってきて苦しくて、そんな中でも私を1番にと優先してくれる想いが嬉しくて、電話口で「親身になって相談に乗ってくれていたのに本当にごめんなさい」と言われるのが辛くて、気の利いたこと何も言えなくて。

おふたりの辛い気持ちを分かったふりなんて出来ないし、まだ若い私なんかに励まされたところで何にもならないだろうし、「何かお手伝いできることあったらなんでも相談して下さいね」としか言えなくて。無力。今まで誰かの為になれたなんて自信持って言えることも無かったけど、本当になにも出来ないんだって実感した。


「でもどこかで結婚式はやりたいんです。」
と言っていた新婦様の言葉が叶いますようにと願うことしかできない。あわよくばまたお手伝い出来たらいいなぁ。

どうしようもなく落ち込んだ時に私はなんて言われたら嬉しいかな。ずっとずっと考えてて、大橋くんなら何を届けてくれるんだろうなぁとか。

「楽しいことを見つけて毎日笑っていてね」

「必ず幸せにします!」

もしどこかでお話ができる機会があったら、同じようなことがこれからあったら「美味しいもの食べてゆっくり休んで楽しいことして過ごして下さいね!」くらいなら言えるかな。言いたいな。
「必ず幸せにする」なんて自分に自信なさすぎて言えないんだけど、言える自信を持って言ったからにはそうなるように尽くせるように働くべきなんだろうなと思った。大橋くんも半分ほんとで半分は自分を奮い立たせるために言ってるんだろうなと思うから。

人を笑顔にして幸せにするお仕事。
結婚式に関わるってまさにそうだと思っている。
大橋くんと同じだなぁってずっと思ってた。でも、この仕事は好きだけど働くことは好きじゃないから「大橋くんと同じだから私も頑張ろう!」とはなれなくて、なんとなくそう思うことから逃げていた。甘やかされて生きていたいので。

でも今回のことがあって、このままじゃだめだよなぁって思った。お客様に必要としてもらえているならそれ以上を返せるように、そうでもないお客様でも「担当」として見てもらえるように。自信を持てるようになりたいし、自分のやってることに自信持っていつかは「任せて下さい!」と言えるようにならなきゃいけない。

後輩いないからいつまでも下の子で、一応4年目のくせに人と比べて出来なさを痛感する毎日だけど、お客様にとっては私しかいない。

自分に自信を持つことが大事なんじゃなくて、自信を持てるだけの努力をすることが大事なんだよね?私はあなたのように自分に厳しく生きることは出来ないし、頑張らなきゃって想いでブログ書きながら一生懸命働くの嫌だなぁって思っている底辺の人間だけど費やした時間は裏切らないって大橋くんを見ていると思うから、せめてちゃんと続けたい。


初めて人の記憶に残れたと実感できたこと、肝心な時に何も自分は言えなかったこと、絶対に忘れたらだめなんだ。


「私なんか」のままじゃきっとこの仕事はできない。

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