優しいジャッジ
認知症の義母はスポーツ観戦が以前から大好きだ。
このオリンピック期間中は観るものがたくさんある。
今夜は『体操男子個人総合』を観戦。
義母は初め、どの選手の演技にも拍手を送っていた。
しかし、日本選手の点数や、トップ選手との差がどのくらいかの実況や表示が出始めると、だんだんと、点数に囚われ始める。
「あんなこと言うてるけどな、もうちょっと上やと思うねん。」
「じゃあ、おかあさんやったら、何点にする?」
「10.0や。」
「満点か?」
「せや。」
満点が10.0という採点方式は一昔前のようだが、その記憶が出てくることはスゴい!
そこからヒートアップしてきて更に、
「ちょっと行ってみよっか、行って言うてこか。」
「何て言うの?」
「もうちょっと上げてくださいって。」
「誰に言う?」
「ほら、そこの、その人。」
(もう会場には到着してるらしい。)
「大阪弁で言うてわかるかなあ?」
「通訳の人に言うたら?」
「…ウーン、…よう言わんわぁ。」
義母が点数判定に対して、どう申告するかを悩んでいるうちに、橋本選手の金メダルは決まった。
橋本大輝選手へ
金メダルおめでとうございます。
視点がズレていったけれど、一生懸命応援しました。
義母は、あなたの全ての、全力の演技に対し、満点のジャッジでした。
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