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光造形3Dプリンタートラブルシューティング1:導入篇

323工房の3DオペレータJです。

今回は3Dプリンターを導入するにあたって当工房が苦労した点、勘違いして失敗したトラブルを公開します。
これから光造形3Dプリンター導入しようとしている方に、迷った際にここを覗いてもらって、トラブルを未然に防いだり不安を解消するのに使ってもらえたらと思っています。

Q. 機械の部位の用語がよく分からない。

いきなり基本中の基本ですが、説明書にあっても英語だったりして日本語の解説が意外とあまりないので書いてみます。

・プラットフォーム

鉄製の台。この上(機械設置時は下)に造形物が生成されていきます。

・Z軸アーム

Z軸とは3Dプリンターでは上下の動きになります。
この方向に動くアームで、プラットフォームと繋がっており、これが少しづつ上がることで造形物が作られていきます。

・(レジン)トレイ/バット

レジン(樹脂)液が入るトレイです。バットとも。下には薄い透明のフィルムが張られます。

・FEPフィルム

レジンの入るトレイ/バットの底に貼られているフィルムです。後述するスクリーンとは別物なので勘違いしないように注意(私だけ?検索するとよく一緒に出てくるので若干紛らわしかった)。

・LCDスクリーン

レジンの入るトレイ/バットを取り外すとスクリーンが置かれています。ここからちゃんと光が出てくるか確認しましょう(3Dプリンターの設定コマンド等にそういうチェック機能があるはず)。
LCDは液晶ディスプレイのことで、スマホ等に使われているのと同じです。

・LEDライト

LCDスクリーンの下、機械の奥に設置されているライト。LCDスクリーンを取り外す時ぐらいにしか基本お目にかかりません。ここから紫外線光が照射され、LCDスクリーンを通して光の形状を変化させ、FEPフィルムの上に溜めたレジンに照射することで硬化させるというのが基本的な原理です。

Q.プラットフォームにカバーはしなくてよいの?

光造形式のプラットフォームには特にカバーやテープ等を貼る必要はありません。むしろ、貼ると上手く造形物がくっつかなくなるので、プラットフォームが多少傷付くのは気にせずに使用しても問題ありません。
(FDM(積層)式では、プラットフォームにシート等を貼る場合があります。この点の解説を勘違いして当初失敗しました……)

Q.造形物が(きちんと)生成されていない。

原因は大きく2つあり、その片方か両方の混合で造形が行われません。

1、データの問題
2、機械設定/状態の問題。

特に初心者はこの判断が難しいことが一番大変であるともいえます。残念ながら、以下に沿って一つ一つ確認していくしかないと思われます。

1、データの問題の原因確認。

1の中では大きく3点の確認が必要になります。

・3Dデータの段階ではエラーがなかったのか?

>裏面のないポリゴンを作ってしまっていたり、浮いた形状をしていないか? また、データそのものが壊れていないか? データを確認してみてください。大抵は、プリント用のデータ配置ソフトでも、インポート時にエラーがないか確認はしてくれるはずです。

・データ上は問題ないが、重量バランスが悪くないか? 適切なサポートは付けられているか?

>例えば上部があまりにも大きく、それを支えるサポートが少ないと、生成される中で落下してしまいます。
また、そのようなことが起こった場合は、プリントをやり直す前に、落下物がトレイ/バットの中に残っていないかを確認してみましょう。これが残っていると、照射光がうまく通らなかったり、生成物と干渉してしまい、やり直してももう一度失敗しかねません。

・造形物への照射時間が短すぎないか?

>各レジンには適切な照射時間があり、これより短いとレジンが固まり切らずに落ちてしまったり、おかしな形に生成されてしまったりします。長すぎてもやはりディティールがうまく出なかったりするようですし、ついでに造形時間と電気を余計に消費します。いずれにしても適切な設定をするのが良いです。レジンの箱や説明書にあるはずなので、読んでみましょう。

2、機械設定/状態の問題の原因確認。

・レベリング(水平設定)は適切か?

>機種によってはレベリング不要を宣伝文句にしていますが、使い続ける中で少しづつバランスが変わってくるので修正知識は必要です。
プラットフォームは必ず水平でなければならず、傾きが大きくなりすぎると一部の生成が崩れてしまったりします。
特に、途中までしか生成されないという場合で、生成の終わりが斜めの状態になっていたら、水平設置を確認しましょう。

・LCDスクリーンが壊れていないか?

>大抵の光造形式3DプリンタにはLCDスクリーンの照射テストをする機能がついていますので、照射テストを行ってみてください。スクリーンに黒いドットが現れたりしたらその部分での造形が行われなくなってしまいます。こうなったらLCDスクリーンを交換する必要があります(一応、無理やりドットがない部分に造形物を置くことで作り続けることはできますが……)。
レベリング(水平設定)が良くないとスクリーンの一部分を圧迫してドットができたりスクリーンそのものが壊れやすくなったりするようです。こまめにレベリング設定は調整しましょう。その方がスクリーンの寿命も長くなりそうです。スクリーンは他の消耗交換部品の中でも価格が高めなので大切に扱っていきたいですし……。

・FEPフィルムに傷がついていないか?

>光を通すフィルムに傷が多いと、照射された光が適切に届かず造形物ができなかったりおかしな形になったりするようです。ただ、経験上、上記2つの問題よりも深刻にはあまりならないようにも思います。

・プラットフォームに付着物や大きな傷がないか?

>造形物が乗るプラットフォームは光造形の場合よくアルコール洗浄をしますが、これが不十分であると造形物の生成に影響します。
大きな傷があると水平になっていない箇所が出ますので、あまりにも傷が増えて凸凹してきたらプラットフォームも交換する必要がでてくるかもしれません(当工房では半年ほど使った時点で「結構傷が増えたなあ」と感じるようになりましたが、その後さらに使っていても問題はないので、よっぽどの場合ではないかと想像します)。

Q.電気代が気になる。

割と大きな音を出してずっと稼働していると電気代が気になりますが、他の家電に比べると3Dプリンタの電気代は微々たるものです。気になる方はメーカーの説明欄に消費電力が書かれていますので確認してみてください。

Q.レジンの量の目安は?

使用するレジンの量がどのくらいになるかはスライサーソフトの中にでてきます。その記載された量から気持ち多めに投入していけば生成途中でレジンがなくなってしまってかけてしまうといったトラブルを防げます。

ただ、当工房ではかなり連続して生成することが多いので、一回当たりの量をわざわざ図ったりせず、経験からくる目分量になりつつあります……。

Q.レジンはそのまま残しておいて良いの?

レジンは紫外線で固まったり色が変色したりするため、可能であれば生成後に余ったレジンはボトルに戻すのが一番安全確実です。

ですが、何度も戻していると手間がかかりますので、大量に生成する場合はそのままレジンを継ぎ足してもいいように思います。当工房ではほぼ継ぎ足し式でやっていますが、今のところ大きな問題は起きていません。

Q.生成物が割れてしまう。

生成物の中に空気や未硬化状態のレジンが残っていると熱膨張等が原因で割れてしまうという事が起きるようです。

対策としてトレイにレジンを入れる際に空気が混じらないよう静かに入れるようにしたり、硬化後も念入りにUVライトを当てるなどしてきちんと中まで硬化するようにしたりすることで解決できます。

ただ、「プールの中のレジンに浸して、一番底の部分で硬化させる」という3Dプリンターの仕組み上、「最後にたくさんレジンが残っている状態で、中が空洞になった構造のものを"閉じる"」と、内部にレジンが取り残されるかと思います。
当工房では今の所、それでトラブルが起きたことはありませんが、構造・設計の段階で少し気をつけた方がいいかもしれません(完全には閉じず、最後にレジンを逃す穴を残しておくなど)。

トラブルは日々色々起こります……

3Dプリンターに限らずですが、新しい技術・道具を使っていれば、ちょっとしたトラブルはよくありますし、その解決方法もなかなか見つからなかったりするものです。
検索して見つかればよし(そして、このnoteも何かの一助になれれば何よりですが)、
以前起こったトラブルを思い出して、ヒントを探したり、
あるいは時間を置くとなぜかちょっと状況が良くなっていたり……

そんなことも、できたらなるべく楽しみつつ、
3Dプリンターユーザー同士で助け合っていけたらと思いますので、当工房にもお気軽にご質問くださいね!(と言っても、私たちもまだまだ未熟で、お役に立てるかは分かりませんが……)

またトラブルシューティングが溜まってきたら、記事も更新していきたいと思います。

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