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ティアマト再び(3)

このシリーズも最後の記事となります。
ティアマトの真の姿はどのようなものだったのか?

過去の2回の記事では蛇やドラゴンでも人の姿をした女神も違いそうだということになりました。
そのうえで、半人半獣ないし動物かその混合体のようなものではないかと書いていますが、ではなんの動物が一番ありえそうなのか?

これに関しては全く当てがないわけではなく、実はWiggermann氏によると2つの動物が候補に挙がります。
それは鹿ないし山羊といった初期の家畜となったであろう角を持った草食動物、そしてもう一つは魚です。

原初の母といった話のときにかなりの確率でこの鹿か山羊を信仰するといったものは世界の各地で行われており、メソポタミアもその例外ではありませんでした。
鹿や山羊そのものが描かれることもあれば、鹿や山羊の角を模した角を生やした人間/超自然的な力を得たシャーマンが描かれることもありました。

ティアマトにこの鹿か山羊の姿を与えるというのは当たらずも遠からずといった範囲になるのではないかと思われるのです。

もう一つは彼女が"海""塩水"に関わるということで、水のモチーフである魚です。
古代メソポタミアの神話に置いて、魚の姿をした人ないし神が知恵を授けるという話が登場します。
この魚人がどのような存在だったかは今では計り知れないのですが、少なくとも彼らは文化的に過去この魚人が技術を与えてくれたと考えており、それは都市が発達した段階でも無視できない存在であったようです。

つまり、鹿/山羊+魚でそれに人を足すかどうか、というのがデザインの肝になるとここでは結論づけても良いと考えています。

更に無視できない話として、ティアマトの11の怪物にはこの鹿+魚の怪物であるシュフルマスが除外されたというものがあります。

シュフルマスと思われる山羊魚の意匠。

シュフルマスは後にギリシャ神話ではカプリコーンとして知られる存在で、ギリシャでは神が化けそこなった姿として嘲笑の対象でもありますが、かつては深い信仰を集めていた神だったと思われるのです。

カプリコーン

この怪物は採用の有力候補であったことまではわかっているものの、結局11の怪物からは取り除かれています。
理由として、その姿や要素がティアマト神にあまりにも似すぎている、ということがあると考えると整合が取れる気がします。

元々メソポタミアでは人の女神の姿がほとんど残っていないということはありますが、ティアマトが当時の最重要英雄神マルドゥクに匹敵する敵対する存在として大きく扱われながら全く姿を残さないのも不自然です。
なので、意匠として既に見つかっているが、ティアマトとしては認知されていない何かが実はティアマトだったと考える方が合点がいくわけです。

ここでは他ではあまり言われていない話をでっちあげ気味に話していますが、もしかすると将来研究が進むにつれ、この辺りが判明してくるかもしれません。

皆さまはどう思われますでしょうか?


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