沢野ひとし著 「ジジイの文房具」 と万年筆: 元教授、定年退職85日目
先日から、沢野ひとしさんの「ジジイ」シリーズを読み始めました。普段は電子書籍を利用していますので、紙の本の購入は約2ヶ月ぶりです(note: 4/3)。前に買った本も読了していないのですが・・・(「本は欲しい時に買い、読むのはあとから」というのが私のポリシーですw)。
著者の沢野さんは「本の雑誌」などで活躍され、特に椎名誠さんのイラストで馴染み深い方も多いと思います。私自身、今回をきっかけに、彼の他の作品も遡って手にしたいと思っています。本書は文房具に関するエッセイ集で、喫茶店でゆったりとした音楽の中で楽しむにはぴったりの一冊でした。
本の冒頭は万年筆に関する思い出話から始まります。万年筆といえば、私にも多くの憧憬や思い出が詰まった筆記具で、非常に興味深く読みました。沢野さんの世代は私よりも一回り上ですが、当時のエピソードの数々に郷愁を感じました。とりわけ、万年筆を購入する際の緊張感と、その後の店員さんとのやり取りには、思わず笑みがこぼれました。
現在、私は万年筆を2本所有していますが、よく考えると自分用に購入した経験がありません(普段使いの筆記具は、ほとんどボールペンやシャープペンシルです)。なぜか万年筆の購入となると、どうしても高嶺の花のように感じ敷居が高いのとともに、価格の幅が広く選び方がわからないということもあるかも知れません。
最初の一本は、2週間ほど前の「越乃寒梅」の話題で note に登場した義父からの結婚祝いです。結納の際に何がよいかと尋ねられ、「万年筆がうれしいです」と厚かましくも答えました。その結果、フランス老舗文具メーカー、ウォーターマンの「ル・マン 100」という万年筆をいただきました。当時すでに文章を書くのはコンピュータの時代になっていましたので、頻繁には使いませんでしたが、それでも署名や正式な書類の作成時には、月に一度程度は活躍してくれました。何よりも、デスクの上に常に置いてあり、その存在がお守りのように私の背筋が伸ばす役割を果たしていました。
しかし、十数年経った頃、インク詰まりや書き味の悪化が見られるようになりました。自力で何とか直せないか試行錯誤しましたが上手くいかず、(沢野さんのエッセイ中にもありましたが)文具店の店員さんに相談しに行きました。購入店ではないにもかかわらず、その年配の店員さんは私の話を親身に聞いてくれまして「自分流に直さなくて正解でしたよ、直せます。それに、お客さんの使い方にペン先を合わせましょう」と丁寧に調整をしていただき、万年筆特有の注意事項も教えてもらいました。ボールペンやシャープペンシルとは異なる万年筆ならではの扱いに、改めて感心しました。
二本目の万年筆は、ある受賞のお祝いで、学生や卒業生たちから贈られたものです。ドイツ老舗文具メーカー、ペリカンの「スーべレーン」という万年筆で、私の好きなネイビーブルーのボディーでした。OB 会でのサプライズプレゼントだったので、非常に驚き、同時に身の引き締まる思いでした。この万年筆もデスクの上に常に置かれ、学生たちからの激励(決して監視ではありませんw)を感じながら使っています。
これからも、この二本の万年筆を大切に使い続けたいと思います。
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