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元教授のパリオリンピック観戦記(4日目、大逆転が続く日本とフェンシングの矜持): 定年退職122日目

パリオリンピックも4日目。本日、日本代表が2つの劇的な大逆転を経て金メダルを獲得しました。これまでのオリンピックでは、むしろ終盤で逆転負けが目立った日本ですが、今回は非常に喜ばしい試合を見せてくれています(なんと、日本は今日時点で金メダル獲得数トップだそうです)。


体操男子団体とスケートボード男子ストリートで、それぞれ大差で負けている状態からの大逆転でした。体操では最後の鉄棒、スケートボードでは最後のベストトリックでの場面でした。日本のこのような勝負強さを最近見かけるようになった気がしますが、これは一体いつから変わったのでしょうか。ただの偶然や奇跡で片付けられることではなく、計画的な努力の結果だと思います。もちろん、海外などでの経験も要因と考えられますが、私が感じるのは平常心を保ちながら集中力を発揮するメンタルトレーニングの成果だと思います。たとえば、今回スケートボードで優勝した堀米優斗選手は「プレー中はイヤホンをつけていましたが、実は音楽はかけないで集中していました」とインタビューで答えていました(下写真)。

最後のベストトリック後に最初にイヤホンをはずす(注1)


さて、昨日と同じように蝉の声で5時に目覚めた私は、今日も朝からフェンシング決勝を観戦しました。今日は男子フルーレの決勝が行われ、日本の飯村一輝選手に期待していましたが、残念ながら準決勝で敗退。また、女子サーブルの優勝候補、江村美咲選手も惜しくも敗れてしまいました(団体戦での活躍に期待しましょう)。男子フルーレ決勝は、イタリアのフィリッポ・マッキ選手と香港の張家朗選手の対決で、非常に白熱した試合が繰り広げられました。15点先取の試合は、なんと14-14の大接戦にもつれ込みました。最後の一本で勝敗が決まる状況の中、見事に張選手が最後のポイントを奪い、金メダルを獲得しました。


ところで、NHKの「明鏡止水:武の五輪」という興味深い番組をご存じでしょうか?  司会は武術に精通した岡田准一さんとケンコバさんの二人(タイトル写真、下写真:注1)。どちらかというと無骨な番組ですが、内容は深いです(この番組に関しては、後日ゆっくりご紹介いたします)。今回ご紹介したいのは、第5回「武士と騎士」と題された、剣術に特化した回です。フェンシング、剣道、柳生新陰流、西洋剣術を通して剣の道を学ぶ内容でした。

明鏡止水:武の五輪(注1)

昨日からのフェンシング観戦で生まれた疑問の多くは、「明鏡止水」を見返すことで解消することができました。たとえば、私はフェンシングは攻撃が全てだと考えていて、防御の重要性を理解していませんでした。

東京オリンピック金メダリストの宇山さんによると、フェンシングは1対1の騎士の決闘が起源であり、まず身を守るための防御技術が重要とのこと。その上で、後ろを向かず自分の剣で攻めることも求められます。つまり、勝つための極意はディフェンスを磨くことと、攻撃時もしっかりと仕留めきるということです。

攻防一体(注1)
剣を直線でなく円軌道で突く(注1)


もう一つ、騎士道の精神がスポーツマンシップの源流であり、礼を重んじることが求められるということでした。相手、審判、観客に対して礼(サリュエ)を示し、試合後にも必ず握手を交わします(これらを行わないと、試合に勝っても失格になるそうです)。この精神があるからこそ、昨日書いたように観客も礼儀正しく試合を観戦していたのだと気づきました。

サリュエの最初(注1)
相手、審判、観客に対して礼を示す(注1)


オリンピックのフェンシングには、エペ、フルーレ、サーブルの3種目があり、個人戦だけでなく団体戦もあります。これからは今回得られた知識を活かしながら観戦することで、フェンシングをより深く楽しもうと思います。

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注1:NHK テレビより


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