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オタワの夜に火災報知器で起こされる: 元教授、定年退職128日目

カナダとの国境を越え、ケベック・シティ、モントリオールと続いたケベック州とついにお別れした私たちは、翌日、オタワのあるオンタリオ州に入りました(下写真)。古代インディアンの言葉で「美しい湖」を意味するオンタリオの名前の通り、州内には湖や川、運河などが豊かに広がっていました。カナダの首都オタワは、その東端に位置し、「森の人」という意味を持つ街です。

オタワのあるオンタリオ州に入りました

オタワのシンボルは全長200kmに及ぶリドー運河で、世界遺産にも認定されています(タイトル写真)。運河には「ロック」と呼ばれる水門があり(下写真、note 5/5 投稿の、イギリスのナローボートの運河旅にもありました)、私たちも観光船に乗り、それらの風景を楽しみました。驚いたのは、冬になるとダウンタウンからダウズ湖までの運河が天然のスケートリンクになることです。その距離は7kmにも及び、世界最長としてギネスブックに登録されているそうです。

運河にあった「ロック」と呼ばれる水門

街歩きでは、新鮮な野菜や果物、花を売るバイワードマーケットと呼ばれる青空市場にも立ち寄りました。カナダでの最後の1日をゆったりと楽しみ、翌日は穏やかにアメリカに戻る予定でした。

バイワードマーケット(青空市場)


ホテルの名前は忘れてしまいましたが、市内の大きなホテルの高層階に宿を取り、早めに就寝しました。ところが、夜中に突然、火災報知器が鳴り響きました。これまで日本でも火災報知器を経験したことがありましたが、アメリカやカナダのものはけた違いの爆音です。

飛び起き、階段を使って外へ避難しました。なぜこんな時に限って高層階に泊まったのか、と後悔しました。階段にいた高齢の夫婦を励ましながら、やっとの思いで1階まで降りました。外に出ると避難してきた人々で一杯でした。その中でひと際騒いでいたのが、下写真に写っている華やかに着飾った若者の一団です。話を聞くと、高校の卒業パーティーの最中だったようで、緊張感のかけらもなく、歌ったり踊ったりしています。中には消防車によじ乗り、消防士たちに叱られている者もいました。

避難したホテル前(パーティー会場ではありません)

結局ボヤ程度で収まったのですが、長い時間外で待たされたので、当然ホテル代が無料になるか、朝食でもサービスされるかと期待していました。朝になると、ドアの下に手紙が入っていたので、どんなサービスがあるのかと開いてみると、単なる報告と謝罪の一言だけで・・・見事に打ち砕かれました。


その後、オタワを出てアメリカに戻りました。少し距離があったため、アメリカとカナダの間にある有名な景勝地、サウザンアイランド(下写真、サラダドレッシングの名前で有名な場所です)に近いモーテル(motorists' hotelの略:客室のドアが駐車場に面し、直接屋外に面しているホテル)を予約しました。ところが、到着してみると、そのモーテルはおもちゃのような小さな一軒家で驚きました。今度は、いつ暴漢が来るかもしれないと不安を抱えながら夜を過ごすことになりました。下写真のように、念のため車にも頑丈なハンドルロックを装着しました。

サウザンアイランド(1000 Islands)に到着
おもちゃのような小さなモーテルと頑丈なハンドルロック

幸い、何事もなく朝を迎えました。周囲はリスが走り回る穏やかな田舎町で、昨夜の不安もどこへやら。そして、私たちは無事にニューヨーク州に戻ることができたのでした。30年前のカナダ旅最終日の話でした。では、また。

リスが走り回る穏やかな田舎町でした



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