JR奈良駅


JR奈良駅が好きだった。

唐突な出だしだが、高校に通っている間、休む日以外は毎日のように通る訳だが、飽きることもなければ、なんなら誇らしささえあった。

今は観光案内所とスターバックスが入り、位置も随分ずらされているが、昔は現在のJR奈良駅の駅舎のあたり(エスカレーターがある辺りだろうか)に駅舎への出入口があった。

少しヨーロピアンな建物、中央にサモトラケのニケがそびえ立つ。それを囲うように、六角形の3~4人ほど座れるベンチがいくつか並んでいた。
僕はそのベンチも好きで、よく学校(登校)まで時間を持て余した時は図書館の本をそこで読んだりもしていた。

駅構内は、狭いものの色々あった気がする。当然だが改札と切符券売機があり、改札の天井あたりを見上げると、小さいものではあったが奈良の風景などを描いたステンドグラスがあった。
これは朧気な記憶なのだが、改札の出口側に非常に小さなカウンター数席のカレー屋さんがあった気がする。もしかしたら、高1くらいの頃まであったのが店を畳んだのかもしれない。
もう1つは、駅舎内ではないが、改札からホームに入ってすぐ、左手にうどん屋があった。いわゆる"駅そば"なのだが、駅そばと言うにはゆったりとした時間の流れる店だった。

思うに、僕はきっとあのやや薄暗い場所に"非日常感"を抱いていたのだろう。
ほぼ毎日通るのに非日常というのも不思議なものだが。
年季の入った素敵な建物の中にいて、美術品の前に座って、きっと今から旅を始めるトランクを持った国内外から来た人たちを見送る気持ちで眺める。
僕も、遅めの1日が始まる。
駅の出入口は特別だった。

なんだろう、ここまで書いて『結局駅じゃなくて駅にいる自分が好きだったんじゃないのか?』と思えてきたが、そこは『駅にいる自分が好きだった駅』ということで。
まあとにかく、昔の方が味があって良かったなぁ。
今も今で、あの外観にスタバがあるのはとても面白いけれど。

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