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アフリカの小国の革命家に生きる術を学ぶ

ブルキナファソという国をご存知だろうか。

アフリカの小国で、元フランス領。今年の始めにクーデターが起き、従来の政府のテロ対策に不満を持っていた軍が政権を握った。

なるほど、アフリカや発展途上地域にはよくある話かもしれない。上手く届かない援助。飢餓。疫病。政情不安……こうしたイメージも間違いでは無いが、アフリカにこういうイメージを貼り付け続けると、それは偏見に変わり、地域の持つ力や主体性を奪う。偏見に囚われる「先進国」の我々も、どこかに集団的欠落を抱えるようになる。

では、トマ・サンカラという人物をご存知だろうか。

ブルキナファソですら知っている人が多く無いはずだから、更に知名度は下がるだろう。しかし、この1980年代にブルキナファソの政治の表舞台に颯爽と登場し、数年後には暗殺されてしまった彼は、現在から見ても先進的な政策を生み出して来た。(ちなみに暗殺にはフランスが関わっていたとされる①)

大国からの援助に頼らない食糧自給の確立、積極的な植林、予防接種の普及、教育の普及、線路等インフラ建設、ジェンダー平等の推進(アフリカで広く女性限定に行われて来た残酷な悪習の禁止、男性が家事をする日の制定、政治における格差の解消等)といった、どれも現代の世界でも必要とされ、必要だからこそ、実直に推進する事が美しい事を、彼は推進していった。

そう。彼はただただ、美しく、眩しかったのだ。

もちろん手放しに賞賛できる訳では無い。上に挙げた彼の諸行動の多くは力強い成果をもたらしたが、民主制より実質的なトップダウンに近づいたり、インフラ建設で住民の動員に頼ったり、伝統との強引な対決が弊害を起こす事もあった。伝統が時に悪習となるように、革新も時に悪を生んでしまう。(②③④)

しかし、大国のパワーバランスとその付き合いで政治を行う人々を越え、全方面で必要な事を行い続けた彼は偉大であり、長年の植民地支配と大国の欺瞞に翻弄されて来たアフリカの思想が、反映されていると思う。(アフリカ等発展途上国の考えが、世界で大事件が起きた時に堂々と表明され、感動する事は少なくない。今回のロシアによるウクライナ侵略の際の、ケニアやキューバ、南アフリカの声明には強さがあった⑤)

私は彼から何を学べるだろうか。

それはシンプルに、縛られない心で、必要な事を行えるのが、真の自由であるという事だ。

情報化社会で、あらゆる情報が溢れ、金にすらなる時代。惰性で行われる習慣と、真逆に早く新しいものへ向けて走れ!という価値観の両方が社会を覆い、私を含め、多くの人を悩ましている。私達を悩ませるものの多くが、一見情報の体系を身に纏い、もっともらしく通用している。必要な事をひたすら言ったり行動を続ければ、奇異な目で見られるかもしれない。

そう、「1980年代のアフリカで先進的な事をやったサンカラは凄いねえ」という見方も場合によっては「彼を奇異に見る見方」の一つかもしれず、本人はただただ「必要な事に心を燃やしたい」と思っていただけかもしれない。

人生の事も社会の事も、若ければ焦り悩むし、多分年を重ねれば、うなだれ諦める事が増えるのでは無いか。しかし何故焦り、何故諦めるのか。情報の体系をベリッと剥がし、できるだけ裸の現実に触れるようにして、考え動きたい。

(参考)

|ブルキナファソ|サンカラ殺人を巡る未解決事件を審理する裁判が始まる | INPS Japan


若き革命家大統領の死から30年:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)


Africa's Che Guevara: The Life of Thomas Sankara | I Gotta Story to Tell | Episode 14 - YouTube


『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争 - 岩波書店 (iwanami.co.jp)


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