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エルガー夫人

 (これは、私がときどき書く、クラシック音楽のオタク話です。なるべく詳しくないかたにも通じるように努力して書くつもりですが、それでもよろしいというかたは、お読みくださいませ…)

 エルガーという作曲家がいます。20世紀前半に活躍したイギリスの作曲家です。1857年生まれ、1934年没。有名な曲に「愛のあいさつ」や「威風堂々第1番」などがあります。「愛のあいさつ」は、よく電話で「少々お待ちください」と言われたあとに流れています。また「威風堂々第1番」も、お聴きになれば「ああ、この曲は知っている」とお思いになるかたが多いのではないかと思われます。

 エルガーには年上のパートナーさんがいました。アリスという奥さんです。「愛のあいさつ」もアリスのために作曲されました。エルガーは、生涯にわたって、奥さんの意見を聞かずして作曲はできなかったと言います。じっさいに、エルガーは晩年、アリス夫人に先立たれたのちは、作曲はできなくなっています。(指揮者はできたみたいですけど。)なんかわかる気がするのは、私自身、妻の助言なしに、こういう文章は書けない気がするからです。(自分と、エルガーほどの大作曲家を比べるなんて!と思われるでしょうが、いやいやそういう問題ではないと思いますね。)エルガーの奥さんが、作曲ができたかどうかはわかりません。おそらくできなかったのかもしれませんが、エルガーは奥さんなしに作曲はできなかった。アリス夫人は、自分では作曲しなかったものの、音楽の歴史に大きな影響を与えた人物だということが言えそうです。

 エルガーの同時代のイギリスには、ホルストやヴォーン=ウィリアムズ、またウォルトンと言った大作曲家がおり、そして、ビートルズを生んだのもイギリスです。意外な感じがする気もしますが、イギリスはだいぶ大作曲家を生んでいます。

 エルガーの最初のヒット作は、42歳のときに発表したオーケストラ曲の「エニグマ変奏曲」だと思われます。かなり大器晩成型と言えそうです。これはオーケストラのために書かれた変奏曲としては、ブラームスの「ハイドン変奏曲」と同じくらい重要な(と言い切ってまずければ、私の好きな)曲であり、美しくて力強い名曲です。

 私は、レッスンで「愛のあいさつ」を習ったことがあります。私の先生は黙っていましたが、その楽譜には編曲者として先生の名前がアルファベットで書いてありました。先生の編曲のこの楽譜は、海外で出版されているようなのです。

 最後に、エルガーのおすすめの曲を挙げて終わります。「交響曲第2番」です。これは1時間くらいかかる長い曲で、かんたんに人にはすすめられませんが、エルガー節が全開であり、傑作だと思います。リンクとしてハーディング指揮ロンドン交響楽団のYouTubeをはりますが、とにかく長いですので、律儀にお聴きになる必要はまったくないです。どうぞスルーなさってください。


 というわけで、奥さんがいないと作曲できなかったエルガーの話でした。おそまつさまです。

(※サムネはロイヤル・アルバート・ホールの写真をお借りしました。ここでプロムスという演奏会が行われ、そのプロムスのラストナイトで、必ずエルガーの「威風堂々第1番」が演奏されます。)

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