見出し画像

ブルックナーに目覚めたころ

 (※これは、私がたまに書く、クラシック音楽オタクネタの記事です。ブルックナーの交響曲について書こうとしています。ちょっとマニアックな話になると思います。それでもよろしければどうぞお読みください。ただし、おもしろい話が書けるかどうかはわかりません…)

 私がブルックナーに目覚めたのは遅かったですね。学生時代のことになりますが、私にはブルックナーのよさが長いことわかりませんでした。むしろ「ブルックナーのよさなんか、わかってたまるか!」とさえ思っていました。それが、こんなにブルックナーが好きになるのには、ある程度の時間が必要でした。

 はじめての出会いは、所属している学生オケが、ブルックナーの交響曲第9番をやったときです。私は降り番でしたから参加していませんが、嫌でもブルックナーに付き合わざるを得ませんでした。このころはブルックナーはよくわかっていませんでした。それにしても学生オケがブルックナーの9番なんていう難しい曲をやる話なんて、そのあとも、聞いたことのない話ですね。もちろん客席で聴いたこともないです。

 私が学生時代は、チェリビダッケも、ヴァントも、朝比奈隆も、現役指揮者でした。そういう時代だったのです。そのころのことを懐かしく思い出されるかたは、私と同世代のかたなのでしょう。私がブルックナーに目覚めつつあったときは、ブルックナーが大好きだった、あるオケの友人が作ってくれたカセットテープでした。カラヤン指揮ベルリンフィルの1975年録音の、ブルックナー8番。いま思うと、かなり良心的な選曲で、演奏もいいですし、じつに親切なカセットテープでした。LPレコードから作ってくれたようですが、そうするともちろん、第3楽章の途中で、B面に行くわけです。そこも、非常に音楽的におかしくないところでB面に行くように作られていました。ほんとうに彼のブルックナー愛のこもったカセットテープでした。

 そのころ、ブルックナー開眼のころに視聴したブルックナー作品は、やはりカセットテープで持っていた、ホルスト・シュタイン指揮バンベルク交響楽団による交響曲第5番でした。放送用録音であるようで、たしか第1楽章の最後に、トランペットの派手な失敗の入っているライヴ録音でしたが、いい演奏でした。それから、テレビで見たのが、メータ指揮ウィーンフィルの来日公演での8番、また、朝比奈隆指揮シカゴ交響楽団による5番などでした。なんだか8番と5番ばかり聴いているようですが、やはり入門用の曲って、本格的な名曲がいいんですよね。たとえば私がバッハをひとにすすめるとしたら、その人がキリスト教の人なら「マタイ受難曲」、そうでないなら「フーガの技法」をすすめます。

 だいたいそのへんの「主定理」を制覇してしまうと、あとの曲は「系」ですから、みんな好きになれるのです。ブルックナーの交響曲って、目指しているところはほとんどどの曲もいっしょですから…。「山登り」のような曲ですね。何合目、何合目とのぼっていって、最後は頂上へ。雄大な自然のような作品が多いですね。

 さて、すっかりブルックナーに開眼した私が、さっきの友人と、もうひとり、やはりオケの友人に誘われて行ったのが、朝比奈隆指揮NHK交響楽団によるブルックナー8番でした。以下にリンクをはりますね。読まなくてもだいじょうぶです。その日の思い出です。

ブルックナーの交響曲の生演奏の経験は、上の9番を除きますと、7番(ある学生オケ)、6番(ある学生オケ)になります。あとはCDとかYouTubeとか、最近はナクソス・ミュージック・ライブラリなどで楽しんでいます。

 さきほど、少しカラヤンの名前を出しましたが、ブルックナー演奏に、近代的トスカニーニ流インテンポ演奏を最初に導入した大指揮者が、カラヤンである気がします。1957年の8番などもとてもよいです。ただし、カラヤンのブルックナーがすべてよいわけではなく、ベルリンフィルを指揮した9番などは好きになれません。前にも書いたことで恐縮ですが、私はかなり正確な絶対音感を持っており、カラヤンの9番の楽譜は、クライマックスでの和音が気に入らないのです。最初、デルマン指揮のCDではじめてその和音を聴き、気に入らないと思っていましたが、のちにマタチッチ指揮のCDでもその和音を聴き、ある程度、流布している楽譜なのだと思うようになりました。

 カラヤンのブルックナーですばらしいのは、ラスト・レコーディングとなったウィーンフィルの7番です。はじめて聴いたときは、もうこのまま死んでしまいたいと思うほど感激した覚えがあります。

 ヨッフムはカラヤン以前のスタイルのブルックナーですが、とてもすばらしく、最近、ナクソス・ミュージック・ライブラリで聴いた交響曲全集は、全曲、むらなく出来がよく、とてもよいです。金管がちょっときたない音を出すあたりも、昔の演奏って感じですね。

 最初のほうに、私の学生時代は、チェリビダッケ、ヴァント、朝比奈隆が現役だったと書きましたが、チェリビダッケもいいです。ちょっと遅すぎるのが難点ですが、ほんらいは生で聴くべきものでしょう。私のオランダ人の友人も、チェリビダッケこそは最高のブルックナー指揮者だと言っており、また、私の友人の牧師は、ミュンヘンの神学校で博士論文を書いていたころ、なんどもミュンヘンフィルで生のブルックナーを聴いたそうです。うらやましい。

 チェリビダッケの弟子である末永隆一さんの指揮もすばらしいですね。末永さんの指揮でブルックナーは、少ししか聴いていませんが、じゅうぶんによさはわかりました。

 ヴァントは、とにかくハズレがないですね。ヴァントは、ブルックナー以外の曲は、どう評価されるべきかわかりませんが、残されたブルックナーの録音は、すばらしいと思います。

 以下に、私がほんとうに好きなブルックナーの演奏を書きますね。

 8番は、ケーゲル指揮ライプツィヒ放送交響楽団のピルツというレーベルから出ているものが最高だと思っております。YouTubeでも聴けます。ホルンが大きいのがかえってバランスよく、また全体的に、オケが好感のもてるオケで、望ましいです。ハース版を使っており、文句なしです。

 5番も、ケーゲルもいいのですが、やはりこれは、スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団でしょう。どうも私、ブルックナーの演奏では、こうした、きっちりした、ひとつひとつの音をおろそかにしないで、速めのテンポで、辛口に仕上げたものを好む傾向にあるみたいです。この5番は、スコアを見てみると、ブルックナーが「一音入魂!」で作曲しているのがよくわかりますので、ひとつひとつの音をおろそかにしない、雰囲気で行ったりしない演奏が私の理想です。

 7番は、さきほど述べましたとおり、カラヤンのラスト・レコーディングが最高ですね。最高すぎて滅多に聴けません。これはちょっと「雰囲気の」演奏かな?笑

 6番は、やはりスクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団がすばらしいです。はじめて聴いたときの衝撃は忘れがたいものがあります。やはりきっちりしており、ホルンが大きめでバランスもよく、すばらしいと思います。

 9番は、ありきたりかもしれませんが、シューリヒト指揮ウィーンフィルが最高です。やはりきっぱりとした、あいまいさのない名演奏ですね。編曲も奏功していて、すばらしいです。この時期のウィーンフィルは、なにを演奏しても名演奏になったのではないかというほど、すばらしいものがたくさんありますね。

 ほかの曲は…。4番も好きなのですが、「これぞ」という演奏には出会いませんね。3番も出会いません。2番、1番も好きですが、そこまで入れ込んでいるわけではありません。ブルックナーの交響曲以外の作品は、あまり聴きません。テ・デウムとか、ミサ曲とか、いい曲もありますが。そういえば、ミサ曲第3番は、ある学生オケ、学生合唱団で、生で聴いたことがありますね。いい演奏でした。

 さきほどの、チェリビダッケのブルックナーの好きなオランダ人は、ストコフスキーが若いころしかブルックナーを取り上げていないことを残念だと言っており、録音が残っていれば最高だったろうと言っていますが、私は彼とは意見が違います。ストコフスキーは、ブルックナーが自分の芸風にあわないことを、若いころに悟ったのだと私は思っています。

 もちろん「嫌いなブルックナー演奏」もあるのですが、記事が長くなるだけですし、後味が悪くなることを恐れて、挙げません。それから、私の世代のどうしようもない面ですが、それ以降の、現代のブルックナー演奏をよく知りません。せっかくナクソス・ミュージック・ライブラリに、図書館のカードで無料で入れるのですから、もっと聴きたいと思いますけどね。林憲政指揮のブルックナー交響曲全集は聴いたのですが、とりあえず5番が、かのマタチッチやクナッパーツブッシュの使っていた改悪版の楽譜を使用していて仰天でした。でも、お客さんは大喜びですね(すごいブラボー)。

 とにかくブルックナーの交響曲に目覚めると、病みつきになります。これ、ブルックナーは、1番、2番、3番の順番に書いて、初演していたのですよね…。そりゃ理解されないだろうな…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?