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田川建三と誤字脱字と掃除

 田川建三の『新約聖書 訳と註 第七巻 ヨハネの黙示録』は、刊行されて半年後くらい、いまから3年くらい前でしょうか、そのころに読みました。たくさんの誤字脱字、誤変換など、誤植がありました。私だけで、30カ所ちかくは見つけたのではないでしょうか。田川さんは、言語の専門家なので、いわゆる「日本語の間違い」的なものは含まれません。(田川さんは、言語は生き物だということをよく知っておいでです。)私が見つけたものは、純粋な「間違い」、すなわち、「機械的」が「機会的」になっているとか、「チャールズ」という学者の名前が「チャーズル」になっているとか、カギカッコがあるのに、カギカッコ閉じがないとか、そういう純粋な間違いだけをカウントして、です。それらは、そのときに、出版社に問い合わせました。ですから、2刷以降は、直っていると考えられます。田川さんの著作は、こうして、ときどき誤植がありますが、この『黙示録』ほど、多かったものはありません。(内容的には、極めておもしろいものです。)
 
 こんなに誤植が多いなんて、あきれたかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、以下のようなことがあります。田川さんが、自分のホームページに載せている、この黙示録の巻の、「読みどころ」のような文章があります。これこそ、誤字脱字の嵐です。田川さんが書いたもの、そのものは、これだけたくさんの、誤字脱字があるのです。それを、校正の人が、努力に努力を重ねて、あれだけの量に抑えているのです。これは、本人が書いただけのもの(校正の人が目を通していないもの)と比較しないと、わからないだろうと思います。

 このように、「校正」「校閲」という仕事は、なかなか、報われない仕事だとわかります。「掃除」みたいなものです。きれいに掃除してあると、誰もなにも言わず、ちょっとでもきたなくなっていると、「なにをやっているのだ!」と叱られます。校正もそれに似て、間違いがない場合には何も言われませんが、間違いが見つかると「なにをやっているのだ!」と言われてしまいます。

 以上ですが、せっかくなので余談をしますと、田川建三さんの膨大な『新約聖書 訳と註』から、おすすめを1冊だけ挙げるなら、『第五巻 ヨハネ福音書』ですね。なぞの書物「ヨハネによる福音書」を、原著者の書いた部分と、まったく方向性の違う編集者が加筆した部分があるという仮説に基づいた仮説でぶった切っており、とにかく痛快です。もし、私がビブリオバトルに出るなら、この本で出るかな。(いや、土居健郎か奥田知志の本だろう。)

 以上です!
 

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