見出し画像

夫の買ったものを理解するには、寛容さが必要です。

先日、出勤する夫が
「今日、多分宅急便でナマズのエサ用のコイが届くから。」
と玄関先でつぶいて出掛けて行った。

わたしは、宅急便の受け取りをすればいいのか、と思いながら彼を送り出した。

我が家の中庭にはプールのような水槽がある。そこには主に小学5年の息子が近くで採ってきたナマズや魚が生息しているのだが、そのエサのコイが届くというのである。

コイのいる庭というと、優雅な日本庭園を連想するけれど、今回我が家にくるコイは食用なのね、日本庭園とはやはり違うよね、なんてことを考えていた。そして、食用のコイも売っていて簡単に買えるのかと感心していた。

宅急便で送られてくるくらいだし、冷凍なのかしらなどと考えながらも、溜まっていた家事を片付けることに意識が向き、その後はコイのことなどすっかり忘れてしまっていた。

★★★

昼頃、階下にいる同居の義母に声をかけられた。
「○○(夫の名前)あてに大きな荷物が届いているんだけど、何かわかる?」

慌てて玄関に行ってみると、高さ60㎝、横100㎝、縦50㎝くらいのクロネコ〇マトの柄の大きな箱がドーンと置かれている。身長140㎝前後の我が家の小学生が見つけたら、喜んで入りそうな大きさの箱だ。
「なんかちゃぽちゃぽ言うんだけど。」と義母。

そこで、朝の夫との会話を思い出した。
「ああ、そういえばコイを買ったって言っていました。」

まさかこんな形で来るとは。どんな大きなコイが入っているのだろうかと不安になる。移動しようかと試みたが、持ち上げることができないほど重い。私と義母は箱から出さずにそのまま玄関に放置しておくことにした。

★★★

夫が帰ってくるまでに子ども達が学校から帰ってきた。
みんな、玄関の大きな箱が気になるけれど、移動することもできないし、どんな状態で入っているのか確認するのも恐ろしくて開封もせずにいた。
もっとも、息子は遊びに忙しくて箱の中を見ようともしなかったのだけれど。

そして夕方暗くなったころに夫が帰宅。

帰るなりすぐ箱を開けた。中には大きなビニール袋にコイが30匹ほど入っていた。ビニール袋は、映画「ファインディング・ニモ」の最後、飼われていた魚たちが入っていたビニールのようなイメージ。(写真、撮り忘れました💦)

送料を合わせても4000円くらいだったと言っていたけれど、はっきり言わないところがアヤシイ。自分の小遣いから買ってる??と心の中で尋ねた。

段ボールがちゃぽちゃぽいう時点で冷凍のコイではないとわかっていたけれど、こんなにたくさんのコイ、どうするんだ??と思ったら、夫は一匹ずつ中庭の水槽に移動していった。(水槽は150㎝×150㎝)

画像1

コイは、大きいのが20㎝くらい。30匹すべてを水槽に投入。

「このコイ、みんなナマズに食べられるためのものなの?」

「エサのつもりで買ったけれど、こんなにきれいだとは思わなかったなあ。ちょっと愛着がわいてきた。」

エサとして食べられることになってしまうのが惜しくなってきたらしい夫。

しかも、このコイ、今までおそらく外敵のいないところで育ってきたと思われるので、多分当人(魚?!)達も自覚がないまま、いきなり命の危険にさらされることになるのだそう。

え、ということはこのコイは別に食用のコイというわけではないのか!!観賞用!?もしかしたら日本庭園で優雅に一生を終えるはずだったのに、まさかの食用になってしまうとは。
何とも殺生な。

それでも、コイは元気に水槽の中で泳ぎ始めた。
ナマズは、おなかが空いているはずなのだが、すぐには食いつかなかった。食べたいというスイッチが入った時に食べるのだという。

しかし、このコイ、ナマズさんに丸呑みにされるのか。今はナマズと一緒に泳いでいるけれど、ナマズのスイッチが入ったら心の準備もなく飲み込まれてしまうというのだ。
「千と千尋の神隠し」の、カオナシがいきなりカエルさんを食べてしまう場面を思い出していた。カエルさんはまた復活していたけれど・・・ねえ。

★★★

翌朝、水槽を見た夫が
「心なしかコイが減っている気がする」
という。

餌になるとはそういうことだよね。

それまで、自宅の水槽にナマズがいることは知っていたけれど、すべて我関せず、夫の好きなように遊んでもらっていた。ナマズが何を食べるかなんて、気にも留めていなかったことにあらためて気づく。

★★★

しかし、ここで気になったのは、ナマズのエサはコイでなければいけないのか、ということである。夫が出かけた後、こっそりナマズのエサについて調べてみた。

すると・・・

人工飼料や鶏肉でもいいというのである。

ナマズのエサがコイでなければいけない理由などどこにもなかった。

(ただ、生まれた時から飼われていないのであれば、動くものをエサとは認識しないとのこと。我が家のナマズは川からつかまえてきたものなので、人工飼料や鶏肉を食べないらしい)

★★★

いろいろと言いたいことが出てきたけれど、ここはグッと我慢。きれいなコイを自宅中庭に放ち、わたしと子ども達は高級庭園のある生活をしているような気分を味わわせてもらえていると考えよう。

予定よりも短い命になってしまうかもしれないコイには申し訳ないが、家庭の平和のために夫の買ったものは温かく受け入れることにする。今日もコイの数を数えながら、

・食物連鎖の厳しさ
・命をいただくことのありがたみ
・夫には寛容であれ

ということをを学んでいる。







この記事が参加している募集

よかったら、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは明日への活力と、クリエイターとしての活動費として使用させていただきます。