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1月4日

初の長期一人旅、七日目。
心がついてこない。体が動かない。ホテルから出られない。
ただ、このままで良くないことはわかる。

何かしなければ。行動しなければ。

持ってきた本を読む。じーっと文字を見つめるも内容は一切入ってこない。
カッコつけて持ってきた哲学書。内容なんか入るわけない。バカなおれがわかるわけないだろと自己否定が始まる。

ホテルから出なければ。外へいかなければ。

前日に櫛田神社のくじ引きで当てた日本酒の存在を思い出す。小瓶を開け、ぐびっと飲み干す。徐々にテンションは上がり、気づけば外に出ていた。空気が美味しいんです。

さてそこからは進む進む。歩が進む。しばらく歩き、ふと横を見ると、なんとマンションが曲がっているじゃないか。目を疑った。一瞬酔っているのかと思ったが、間違いない。しっかり曲がっている。不思議だな〜と、写真に収める。都会ではこういう建物は普通なのだろうか。そもそもなぜ曲がっているのか。曲がっている必要あるのか。少し気になった。


迷い込んだ。どこなのだここは。シャッターが完全に降りている。人の気配が感じられない。店と店を繋ぐように掛かっている“運動会でよく見るやつ“が、カラフルなだけに逆に寂しさを引き立たせた。
“その日まで、共に頑張ろう“というポスターを見つけた。

その日って、来るのだろうか。

光が見えた。腰が曲がっている女性が歩いてくる。その人に挨拶をした。その女性も返してくれた。すると突然、くるっと進行方向を変え、今歩いた道を戻っていく。なぜかは分からないが、僕はその人について行く事にした。

先ほどの場所とは変わり、店が営業している。明かりがついている。国旗が揺れている。楽しい雰囲気がここにはある。まるで祭りのよう。正月の余力が残っていた。女性を見失った。
商店街を歩く。所々シャッターが降りている。八百屋さんがあり、みかんが売っていたが600円したので諦めた。この一人旅、既に色々と無駄に使いすぎているのだ。アホ丸出しの旅。

清流公園という場所に着いた。
川を覗いてみる。
綺麗なのだと思う。僕は川に詳しくないし、川に飛び込むわけでも、飲むわけでも、住むわけでもない。だから、この川は綺麗だと認識することにする。僕は勘違いをする人間だ。バカだ。だから自分を信じない。この川は綺麗なのだろう。

顔を上げた。
川には鳥がいた。花壇にはパンジーが咲いていた。道には人が、木が、建物が。
綺麗に見えた。とても綺麗に。

もう帰ろう。



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