続・作品の届け方やヒットの生まれ方を考えてみたい

前回は、広告にまつわる本を読み、今回はPRに関する本を読みました。そして今回も映画のお話と合わせて。

「パブリック・リレーションズ」はPRの概念や手法など、パブリック・リレーションズに関する知識を教科書的に紹介している非常に読みにくい本。
「ブランドは広告でつくれない」「戦略PR」は、広告とPRの役割の違いを事例を交えて紹介しており、それぞれの役割が理解しやすい本。
「影響力の武器」は、人の思考の癖を科学的に解明した結果が書いており、複雑そうに見えて人間は意外と単純な行動パターンで生きていることがわかってしまう本。

今回読んだ本の中にあった広告とPRの役割を引用しながら最近観た映画に照らし合わせて書いてみようと思います。

商品やサービスのブランドを構築していく上で、まず消費者の意識の中にブランド名が理解されて植えつけられている必要があり、消費者に選ばれるためには、ブランドが構築されていなければならない。PRはブランド構築に、広告はブランド維持に強みを発揮する。

前回の広告関連の本を読んだ時に、いかにアテンションを獲得していくかが大事だというようなことが書かれていた本もあり、PRも広告もそれぞれの立場から役割の違いと強みを発信しているんだなと思いながら読んでいました。

それはさておき、「PRの強みはブランド構築、広告の強みはブランド維持」があるという点で、2人の映画監督の作品が思い浮かびました。

「新海誠さん」と「上田慎一郎さん」です。

新海誠さんは「君の名は」が大ヒット、上田慎一郎さんは「カメラを止めるな!」が大ヒットし、一躍有名監督になりました。
(新海誠さんは、過去にも「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」など名作映画がありましたが、一般層の人たちにも認知されたという意味で大ヒットとしています。)

2つの作品は、ハリウッド映画作品のように公開前にがっつり広告をしていない作品だったと記憶しています。「カメラを止めるな!」にいたってはそもそも2館だったので、全くやっておらずという状況。

そんな中で、映画を観た人のクチコミから徐々にネット上で話題になり、メディアが映画作品を取り上げられて、更に拡がり大ヒットにつながった。
カメラを止めるな!は上田監督を中心にTwitterを精力的に活用、毎日舞台挨拶をするなどそういった取り組みも行っていましたね。天気の子は、RADWIMPSの楽曲を真似したりする人がいましたね。

この2つの作品のヒットは、ハリウッド作品のように広告をとにかくうって、話題になったというより、映画を見た人から生まれたクチコミとそれを取り上げたメディアのPR的な部分でヒットになったのではと思っています。
(だから、どちらもめちゃくちゃいい作品であるというのは前提としてある)

2019年に新海誠さんも上田慎一郎さんも新作映画が公開されました。

新海誠さんは「天気の子」、上田慎一郎さんは「スペシャルアクターズ」です。(どちらも観に行ってます。いい作品。)

今回の新海誠さんの「天気の子」は、東宝が今年一番力を入れているんじゃないかと言わんばかりの公開前からのプロモーション。CMも打っていたし、至るところで公開前から「天気の子」に関する話題を観ていたと思います。

今までの新海誠さんの作品もあって、新海さんのブランドが構築されている状態だったので、「天気の子」はブランドを維持するプロモーションを実施していた。結果、蓋を開けたら大ヒット。ニュース記事では、以下のようなことも記載されていました。

新海誠監督の最新アニメーション映画『天気の子』はディズニー映画『アラジン』を抜き、今年度最もヒットした作品として観客動員数が1022万人を超え、国内興行収入が136億円を突破した(2019年10月15日地点)。また、第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門(旧外国語映画賞)の出品作品に選ばれたことでも話題になっている。

ぼくのタイムラインでは、公開日から結構な人が「天気の子」を観に行っていた記憶があります。

一方、上田さんの「スペシャルアクターズ」は、松竹配給で10月18日から公開されているのですが、公開前からあまりプロモーションがされておらず、認知がされていない状態で公開されました。(と個人的には思っています)
ぼくのタイムライン上で、映画を観に行ったという声が1週間経ってもなかなか見れてません。

「カメラを止めるな!」のイメージが強いものの、ある程度は上田さんの映画作品のブランドができていると思っていて、今回の作品が事前に広告プロモーションがされていたら初速は変わっていたのかなと思っています。認知が足りていなかった。

ソーシャル上では、前回同様に草の根的に取り組んでいますが、公開規模が前作品と全く違う約140館(確か)。公開規模が全国規模のため、草の根的に広めていきつつメディアに取り上げられていくことも狙いながら、広告も予算があって実施していたら、もっと多くの人に観られるのではと今回のPRの本と前回の広告の本を読んで思いました。
(でも、「カメラを止めるな!」に次ぐ2作目の作品、前回同様にワークショップ形式の映画作品のため、無名の役者を起用した作品ということを考えるとなかなか広告プロモーションを実施する予算がないのだろう。。。広告予算を捻出できたら、、と思う)

書いてて、中野量太さんの作品も同じことが言える気がします。

日本アカデミー賞も受賞している「湯を沸かすほどの熱い愛」はクチコミで話題となり、ロングラン。その後、今年公開された作品「長いお別れ」は事前にプロモーションを行い、「湯を沸かす~」を観ていた人を中心に足を運んでいた。

商品やサービスにおけるPRと広告の違いは、映画を始めとするエンタメ作品にもある程度活用できるなと思いました。
エンタメ作品においても、知名度がまだ高くない作品・人物においては、がっつり広告を実施するのではなくユーザーの間で話題にされやすいよう感想を述べるなど設計を作る。
ユーザーの間で、認知が取れた作品や人物においては、知名度(ブランド維持)を保つために広告を実施しながらも、ユーザーの間で話題にしやすいような設計を作る。

そして、今回なにが言いたかったというと「スペシャルアクターズ」いい作品だから劇場で観に行ったほうがいいよということを言いたくて書きました。劇場でぜひ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?