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【映画感想文】「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は最高のエンターテイメント体験だと感じた話【ネタバレあり】

 去る5月3日(水)、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(以下、「映画版マリオ」とする)」を観に行った。5連休の初日ということもあり、観に行った映画館は映画版マリオをはじめとして、主に子供受けがよさそうな作品はいずれも満員御礼状態であった。実際、映画版マリオも筆者が視聴した回(15時頃からの回)は半分くらいが子供連れのファミリーだったように見えた。というわけで、今回は映画版マリオの感想を軽く語りたい。なお、ややネタバレも含まれるため、これから観に行く人はここでブラウザバックすることをオススメする。本題に移るにあたり、念のため少し多めに改行しておこう。







 「マリオの映画」というと、30年以上前に実写映画をやっていたので、そちらを連想する方もいるかもしれない(実際、映画版マリオの公開に関連してか、実写版マリオのBDの売れ行きが急に伸びた、という話も聞く)。筆者も幼少時にレンタルビデオあたりで観たような気がするのだが、内容はまったく覚えていなかった。どうやら映画としてはまあまあの出来だったらしいが「マリオ」の看板を引っ提げての映画化としてはちょっと物足りない、というような評価だったらしい。
 その実写版マリオから実に30年以上の年月を経て、まさに「満を持して」本格的な3DCGアニメーションによるマリオの映画が完成したわけである。予告編の時点でゲームのマリオの世界観をうまく表現できていることや、どうやらマリオカートの要素もありそうなこと、ドンキーコングがゲスト出演するらしいことなどがわかっており、かなりの期待ができる状況であった。ただ、先だって公開された海外での評価が、映画評論家(賛否両論)と一般視聴者(ほぼ絶賛)で大きく乖離している点は少し気になった。もっとも、それは不安ではなく、純粋に「そこまで観る人によって評価が変わるなんて、いったいどのような映画なのだろう」という興味である。
 果たして、観る人によって評価が乖離する理由は、映画が始まって数分もするとすぐに理解することができた。この映画、とにかく、ただひたすらに「マリオ」なのである。
 「マリオの映画なのだからマリオなのは当たり前だろう」とツッコミを入れられそうだが、実際「ゲームのマリオに簡単なストーリーをつけて、約90分の映像作品に濃縮した」という感じなのだ。たとえば冒頭でブルックリンの街を横スクロールアクションのように駆け抜けるマリオとルイージは、まさに初代スーパーマリオブラザーズから続く「2Dマリオ」であった。また、ピーチ姫に案内された訓練施設に果敢に挑むマリオの姿は「マリオメーカー」で難解なコースに何度も挑む姿を想起させる。ほかにもドンキーコングと対決する場面は「マリオが最初に戦う相手はドンキーコング(ゲーム「ドンキーコング」へのリスペクト)」という意味合いもあり、その対決でのアクションシーンは若干「スマッシュブラザーズ」を連想させる部分もある。パワーアップアイテムをとって一発逆転するあたりもスマブラ的かもしれない。ちなみにドンキーコング周りだと、ちゃんとクランキーコングやディディーコングなども出演しているあたりも嬉しい。あとはカートで颯爽とキノコ王国へ向かう道中でノコノコ軍団と対峙する場面はやや「マッドマックス」感もあったが、完全に「マリオカート」であった。その直後の大ウツボに飲み込まれるあたりは「スーパーマリオ64」などでの水中面のトラウマシーンを彷彿とさせるし、ほかにはルイージがマリオとはぐれた場面は「ルイージマンション」さながらのホラーっぽさがあった。とにかくあらゆる場面でゲームとしての「マリオ」を想起させる構成になっている。
 正直、ストーリーとしてはそれほど難解ではない。「はぐれたルイージを助けに行きたい」マリオと「クッパの侵攻を阻止したい」ピーチ姫の利害が一致したこともあって二人がタッグを組み、戦力増強としてドンキーコング達の協力を得て、クッパを迎え撃つ。なんやかんやあってマリオとドンキーが途中ではぐれたりしてピンチになるが、最後はマリオとルイージがクッパを撃破して(しっぽを持ってジャイアントスイングして放り投げるあたりも「スーパーマリオ64」のクッパ戦を思い出させる)ハッピーエンド、という単純なストーリーで、メッセージ性も「あきらめないことの大切さ」と「家族を大事に想うことの大切さ」くらいだろう(おそらく)。あとはほんの一握りの多様性要素として、「やたら強いピーチ姫」とか「キノピオやドンキーコングといった様々な種族の協力」などが一応あるくらいか。そのため、映画にメッセージ性などを込めることを好むタイプの映画評論家からはあまり評価されず、逆にエンターテイメント性を重視するタイプの映画評論家や、多くの大衆からは高評価を得る、ということになったのだろう。どこかの映画評論家は、この映画を「『楽しい』が詰まっているだけの映画」と評価したらしいが、まったくもってその通り。ゲームとしての「マリオ」の楽しさを、そのまま映画に落とし込んでいるので大正解だ。
 ゲームのマリオの歴史ももう40年近くなる。ということは40代くらいまでの人でテレビゲームを多少なりとも遊んだ経験がある人なら、その多くはどこかのタイミングで「マリオの出てくるゲーム」を体験しているはず。この映画版マリオには古今東西のマリオのゲームのネタがイースターエッグ的にちりばめられており、それらに気が付くと思わずクスっとしてしまうと思う。加えて「誰が見てもわかりやすい展開」「3Dキャラの動きやカメラワークは一級品で、観ているだけで楽しい」「ゲームのBGMのアレンジや効果音も多数扱われており、耳でも楽しめる(洋楽の懐かしい曲が何曲か使われていたのには驚いたが)」など、たいして前知識がない子供などにとっても「単純に、観ていて楽しい」作品となっている。90分という時間設定も子供が飽きないくらいのいい時間設定だと思う(同じ料金で倍の時間観られるRRRと比較してはいけない)。
 以上、だらだらと書き連ねてみたが、結論としては「ゲームのマリオが好きな人にとっては最高のエンターテイメントとなる」作品である。特にニンテンドーSwitchなどでマリオのゲームに夢中になっているお子さんがいるご家庭などには、ぜひ観に行ってほしい。逆に言えば、マリオにあまり思い入れのないただの映画好きにとってはいささか退屈な作品かもしれない。それくらい「マリオ」であることに振り切った良きエンタメ作品だと筆者は感じた。
 最後に、少し気になった点があったのでそれを書いて締めたい。この映画版マリオ、ヨッシーがほとんど出ていないのだ(マリオ達がドンキーコングの国に向かう道中でちらっと映るのと、最後にヨッシーの卵らしきものが映る程度)。映画によくある「続編を匂わせる終わり方」もあり、次回作があるならヨッシーとタッグを組んでの大冒険になるかもしれない。ほかにもワリオやワルイージなども出す余地があることから、おそらく「任天堂とイルミネーションにやる気があれば」何本でも続編が作れるだろう。ぜひ味を占めてほしい。

どっとはらい。

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