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漫画ルックバックと小山田問題の炎上の本質と近い未来

漫画「ルックバック」における表現が、統合失調症患者に対する誤解が生じる恐れがあるとして、一部内容が変更されるということがありました。

また、オリンピック開会式の音楽担当として発表された小山田圭吾氏が、過去の障害者に対するいじめ問題で辞任するという騒動がありました。

それぞれネットを中心に激しく炎上しましたが、糾弾へ対する反論や、擁護する意見も多くありました。

まず、ルックバックに関しては
「創作物の表現内容にまで、現実の価値観やコンプライアンス規制を持ち込むのはおかしいだろう」
という用語意見が多く見受けられました。

また小山田氏の過去のいじめ発言については
「その当時は鬼畜系文化というアングラ的流行があった。違う時代の発言を現代に批判するのはフェアじゃない」
といった擁護意見がありました。

個人的には、どちらの擁護意見もその通りだと思います。
ただ、双方とも糾弾されることになったのは、このご時世、致し方ないとも思います。

私はこの2つの炎上の本質は同じだと考えます。
これだけ大騒動になったのは、世界規模で民衆の思考や価値観の変化が起こっていることが根本にあると思っているからです。

正しい者しか許されない世界が、すぐそこまで近付いています。

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まず、なぜ今回の問題が起こったのか、原因を探ってみます。

端的に言って、サブカルやアングラ文化が、主流派、つまりメインストリームに流れ込もうとしたことに対する大衆の拒否反応が、今回の炎上に共通する要因だと考えます。

つまり、元々アングラカルチャー出身の小山田氏はオリンピックという陽のあたる場所に出てきたことで糾弾され、ルックバックはジャンプという看板の元で、精神病患者を精神異常者として描写したことによって、問題視されたということです。双方とも、アングラから出てこなければ叩かれませんでした。

例えばもし、この騒動が起こる前に
”小山田氏をFUJI ROCK FESの総合プロデューサーにしました”という話が上がったとして
「ミュージシャンとしての小山田氏が嫌いだから反対」という意見は当然あると思いますが、過去のいじめ記事を持ち出して「あいつは過去にいじめをしていた酷い人間だから反対」という意見は主流派にはならないと思います。それは前科持ちのミュージシャンが普通にステージで演奏していることからも明らかです。

ルックバックも、もしアフタヌーンや漫画ゴラクなどの過激な作品が多い漫画雑誌に掲載されていのなら、全く問題視されなかったでしょう。恐らくスピリッツがギリのラインです。

つまり、オリンピックやジャンプが持つ注目度の高いプラットフォームである、ということが炎上の直接的や要因なのではなく、そのプラットフォームが、メインストリームかアングラか、どちらのステージの上に立っているのか、というのが重要なのです。

オリンピックは正しいものしか許されない舞台です。
ジャンプはどうなんでしょう?
小山田氏の音楽はNHKからも排除されました。
これはNHKが”我々はメインストリームである”と言う意思表示でしょう。
そして、ルックバックの問題となった箇所を修正したということは、ジャンプ編集部の判断としては、メインストリームを進んでいくという選択したということです。

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私は以前からチェーンソーマンがジャンプに掲載されていることに違和感がありました。作品自体は好きですが、ジャンプに載せる漫画ではないのかなと感じていました。
また、NHK教育番組にやたらサブカル出身者が多数起用されていることにも違和感がありました。

ではなぜ、サブカル文化やアングラ文化が、オリンピックや少年ジャンプのようなメインストリーム文化に合流するような流れになったのでしょうか。

これはインターネットコンテンツの発展によって、コンテンツ多様化と細分化が起こったからです。

終戦後から一昔前まで、カルチャーの中心はテレビと雑誌でした。
当時のメインストリーム文化のほとんどは、一部のテレビマンと雑誌編集者が考えていたと言っても過言ではなく、大衆は目の前に差し出されたコンテンツの中で、最もマシなものを選んで、甘んじてそれを受け入れるしか選択肢がありませんでした。
音楽の流行は音楽番組と音楽雑誌が作り上げていて、ヒット商品はワイドショーと週刊誌が作り上げていたということです。

そもそも提示される選択肢が少ないため、一つのコンテンツに多数の消費者が群がることで、大ヒット商品が生まれます。そういう流れでメディア先導によるメインカルチャーが形成されていったという訳です。

そして、その多数派に対する嫌悪感が、カウンターカルチャーとして、サブカルやアングラ文化が形成されていきました。
「みんなと同じのが好きってダサいよね」っていうノリが根本です。
メインカルチャーがあるからこそサブカルチャーが存在し得ます。


対して近年は、YouTubeや音楽や映画などのサブスクサービスなどのエンタメ系インターネットコンテンツの発展と普及によって、大衆は自らの趣向にあったコンテンツを自由に選べるようになりました
そしてコンテンツはユーザーのニーズに合わせて多様化していき、大衆はそれぞれに好きなものを手に取れるようになり、その多くのカルチャーから更に新しいカルチャーが派生していき、その度にカルチャーは極端に細分化されました。

その結果、圧倒的多数派というものがいなくなり、メインカルチャーの存在がどんどん薄れてきて、サブカルチャーとの境界線はどんどん曖昧になっていきます。
今では境界線の位置が認識できないところまで来ていると思います。
「みんなと同じのが好きってダサいよね」というノリは、もうほとんど存在していないように思います。

そして、メインとサブの境界線が無くなった現在
ジャンプにチェンソーマンが載ることになります。

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前述はあくまで文化の境界線の話になります。

それとは別軸の"正しさ"の境界線が、
いままさに、引かれ始めているように感じます。

それは、SDGsのような"みんなで正しいことをしましょうよ"という考え方がグローバルスタンダードになってきた影響で、正しいものと正しくないものの間に境界線が引かれ始めている、ということです。

SDGsのスローガンのような
”多数が道徳的に絶対的に正しいと判断すること”
に反するような言動を行った者達には、多数派からの壮絶なバッシングが待っています。

(この記事を書いている最中にDaiGo氏が炎上しました)

今の世の中は”道徳的正しさ”を判断基準に行動をし始めてます。
”正しくないものは悪であり、悪は社会から糾弾されて然るべき”
という考え方が日に日にスタンダード化しているように感じます。

”一切の悪を許容しない社会”が近付いています。

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悪は許されない、なんて当然のように思うかもしれませんし、
むしろ理想的であると考えるかもしれません。

ただ、その善悪を判断するのは誰でしょうか。

大衆です。

例え、誤った情報であっても、誰かにコントロールされたデマだったとしても、大衆がそれを悪と判断したとき、正義の鉄槌はインターネットを通して一斉に誰かに振り下ろされます。

そして、個人が過去に起こした正しくない行動は、インターネットが存在する限り、永遠に記録が残ります。
つまり、ネットには時効は存在しません。
今回のように過去の言動を引きずり出されて、バッシングを受ける流れは続くでしょう。
そして過去の過ちはそう簡単には許されません。

これは大変に息苦しく生きづらい世の中になりそうです。

そして今後、この息苦しさに耐えかねて、
アングラ文化が発生するのは間違いないと思います。

そんな世界はツマラねぇ!
くだらねぇ文句があるヤツはかかってこい!
って感じの文化です。

今はその新しい境界線が引かれる直前です。

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迷惑系に片足を突っ込んでいるようなYouTuberが炎上のたびにスーツを着て謝罪するのは何故でしょうか。
多分、メインストリームに乗っていたいからでしょう。

アスリートや有名人が、snsでの誹謗中傷に対して厳正に対処する姿勢が賞賛され始めています。
正に道徳的正義が支持される時代です。

既にゲームやアニメでは流血表現や四肢欠損表現には規制が入っていますが、そのうち殺人表現にも規制が入るようになるかもしれませんね。

タバコの規制がどんどん進んでいますが、欧米で議論がされている公共の場でのアルコール規制は日本ではどうなるのでしょうか?

ジャンプは世界展開を考えているみたいですが、
今のコンプライアンス意識では、世界線は戦えないどころか、どこかの国で大炎上するのが目に見えています。
もしかしたら、その大炎上は新作が原因ではなく、キン肉マンのブロッケンマンが掘り起こされて、問題視されるかもしれません。

今のうちに全作品の全コマをチェックした上で、
ブロッケンマン以外にも問題がありそうな表現が見つかった場合は、全世界に対して謝っておいた方がいいかもしれませんね。

ジャンプ編集部が”正しくありたい”と思うのであれば。

もしあなたに後ろ暗い過去があるのだとしたら、世界進出やメインストリームに進出する前に、全世界に向けて懺悔をする必要があるのかもしれません。

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そして、この記事を書いている最中に、DaiGoさんと名古屋市長が炎上しました。

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