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(本屋のエッセー:1)夏休みにやり残したこと、という話

2022.8.23

夏休みにやり残したこと、という話
 小学生の息子達の夏休みがあと一週間で終わる。私は普段、週に一回平日にしか休みがない。なので今年の子ども達の夏休み、私が休みの日はめいいっぱい子どもと遊ぼう、連れ回してやろう、何なら私が一番楽しもうと決めていた。「今年の」というのも、昨年は私自身が本屋カフェを始めたばかりで全く余裕がなく、そもそも昨年の夏休みの記憶がない。というわけで2022Summerはキャンプ、海水浴、川遊び、花火、プール、バーベキュー、夏祭りもどきといろいろやったわけです。まぁ楽しかった。もうクタクタ。大人も子どももやり切った。「夏休みっていいな!」本当にそう感じた。
 それであと一週間で夏休みが終わるのでやり残したことがないか子ども達に聞いてみた。すると返ってきた長男の言葉にちょっと感動したのです。
「うーん……。ママの唐揚げが食べたい。」
 ここでちょっと説明しよう。長男の大好物は唐揚げ。唐揚げを食べたらいちいちランク付けする。大体が三位以内(大体うまいという)なのだが、「ママの唐揚げ」は絶対一位、殿堂入り、幻の唐揚げなのである。というのも滅多に作らない、毎回味が変わる、今度作る作る詐欺といったオプションが付いているためプレミア度が高い。希少価値、コーヒーで言うコピ・ルアク(※1)的なものである。
 そんな私・母の唐揚げをそんなに待ち望んでいたなんて。基本ネガティブな私は、それを聞く状況と機嫌によっては「いつもちゃんと手料理しなくてごめんね……」とか「そんなに頻度低いかな……」とか「む、ほかのもうまいぜよ」とか思ってしまうわけなのだが、今回は違った。ナニソレ嬉しい!作る作る!夏休みの締めにママの唐揚げ食べたいと思ってくれてたなんて!と調子にのり、あー言葉にされるってこんなに嬉しいことなんだな、と再確認し感動したわけであります。
 なんだか最近つくづく思うことは「察してほしい」とか「言わんでもわかるやろ」とか、まぁ~わかりませんな。私事でいうと、もともと何でも口に出しちゃうタイプなので失礼なことも多々あるけれども、嬉しい楽しい大好きみたいなポジティブな言葉はどんどん口に出していこう!ということであります。
 ちなみにその幻の唐揚げは、食べたいと言われた晩にすぐ作らないのが作る作る詐欺師の母であり、「あと一週間で本当に作るのかな。」と訝しがられたのも私であります。でも今日作った!母が本当にちゃんと唐揚げを作ったから、今日は唐揚げ記念日(※2)。夏休みの思い出なのでした。
 そして遊びに遊んだ夏休み、宿題は当たり前のように終わっておらず、次男のやり残したことは冷静の極み、「特にない。」の一言でした。あー、夏休み(※3)、冷静と情熱のあいだ(※4)にこれにて終了でございます。
(終)

参考:
(※1)コピ・ルアク:ジャコウネコの糞から採れる未消化のコーヒー豆。希少価値が高く、高値で取引される。かいつまんで言うとネコのウンコーヒー。
(※2)今日は〜記念日。:1987年に発表された歌人・俵万智さんの「サラダ記念日」にちなんで。元ネタは『「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日』。そんな感じでいうとそれっぽい。
(※3)あー、夏休み:1990年発表のTUBEの楽曲。夏になると100回くらいどこかしらで聴く懐メロのひとつ。

(※4)冷静と情熱のあいだ:1999年に発表された江國香織と辻仁成による恋愛小説。2001年に映画化。ケリー・チャンがめっちゃ美人。


 


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