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(本屋のエッセー:6)あれもしたいこれもしたいもっとしたいもっともっとしたい、という話(前編)

2022.9.27

あれもしたいこれもしたいもっとしたいもっともっとしたい、という話(前編)

 バイクで久しぶりに出勤した日曜日、このままどこか遠く連れてってくれないか〜なんて物思いに耽っていたら、ちょこちょこお店に来てくれるかわいいバイク乗りの女の子がふいに「昨日、思い立ってソロキャンしてきたんです。」と言った。その女の子は一人でバイクにごいごい乗って日本全国旅しちゃうような人で、いつも私にはとても眩しく映る。三連休、本当は四国やらに行く予定だったのが、急な仕事でキャンセルになったが、やっぱり時間ができたので、家族に「ソロキャンしてくる。」と告げ向かった先が南阿蘇村、そして我が本屋カフェであった。
「昨日はソロキャンだけで14組くらいいましたよ。」と彼女。
「え!?そんなにいたの!?私にもできるかな〜。」と私。
「できますよ〜。」と彼女。
「……じゃあ行こっかな〜。よし行こう!私、今日、ソロキャンしてくる。」と主人に事の次第を伝えたら「いいよ〜。」といつもの軽い返事。主人は私のこの「突発性あれしたいこれしたい」に15年も付き合ってきているので、ちょっとやそっとのことじゃ驚かない。
 そうと決まったら頭の中はソロキャンでいっぱい。まずキャンプ場に電話して受付ギリギリの17時頃のチェックインになることを伝え、テントとテーブルと椅子と寝袋と、要るものを一通り思い浮かべ、最低限の装備でいけるだろうとソワソワしながら店の1日の営業を終えた。店の片付けもそこそこにキャンプ場にチェックイン。そう、そのキャンプ場は店と自宅の間にあり、どちらからも10分もあれば余裕で着くというめちゃくちゃ近所のキャンプ場なのだった。
「今日は何組お客さんいますか?」と私。
「今日は1組なんですよ〜、お客さんだけ。」とお兄さん。
「え!?私だけ?大丈夫かな〜初めてなんですよ。」と私。
「三連休終わったんでね。大丈夫でしょ〜。夜タヌキがパーティーしますけど、ソロキャン楽しんで〜!」とお兄さん。
「う、うん!ありがと〜!」と、受付を後にした。
 何だか不安なまま自宅に戻り準備をしようとしたところ、長男(4年生)が「ママキャンプ行くんでしょ〜?弟(1年生)が行きたいって〜話し合って決めた!」といいながら走り去って行った。「ん?弟?珍しいな。絶対途中で帰りたいって言い出すよな…本当に行きたがるのかな。」と訝しがりながら準備をしていると、当の弟の姿が見当たらない。聞くと1日中遊び疲れて主人の車の中で爆睡しているらしい。まぁじゃあ置いてくかと思いきや、「じゃあ俺が行く!」と長男がまたもや走って戻ってきた。「おう!じゃあ行こう!」と、決まれば善は急げ。お風呂!明日の用意!をバババっと済ませて、夜逃げさながらキャンプ用品とランドセルを車に詰め込みいざ出発。
 とはいえまだ店の片付けが終わってなかったので急いで終わらせ、これまた近所のスーパーへ買い出し。この時点で18時。めちゃくちゃ急いでいたのにはわけがある。実はライトが1つしかなく、18時半には暗くなるのでテントを建てられるかヒヤヒヤしていたのだった。とりあえずビールと肉と水と…とスーパーを物色していると、「おやおや、佐藤さんではないですか?」と声を掛けてくる者がいた。

(続く)

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