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「帝国ホテル建築物語」4刷が決定しました

 今までドラマの関連本以外では、文庫本で重版がかかった記憶はないのですが、このたび「帝国ホテル建築物語」の4刷がきまりました。いろいろな新聞や雑誌で、取り上げていただいたおかげです。
 上の写真は明治村にある旧帝国ホテルの窓の一部。茶色く見えるところが、実際は金色です。ガラスに金箔を貼っただけでは、耐久性に欠けるために、2枚の小さなガラス板の間に、金箔を挟んであります。それも山形に配置してあり、単純な市松模様よりも、はるかに手間暇がかかったそうです。

明治村の旧帝国ホテルの窓

 この金箔ボーダーは、上の写真のように、あちこちの窓に使われています。大正年間に、これだけの緻密な作業をやり通した職人たちもすごいけれど、明治村で同じように再現した心意気にも、ただただ頭が下がります。日比谷から、すべて割らずに持っては来られないし、改めて作ったものも多いので。

明治村の旧帝国ホテルの柱

 上の写真は、私が初めて明治村に行ったときに、目を見張った柱です。ライト館の見所は、なんと言っても、2階まで吹き抜けの空間にそびえる「光の籠柱」ですが、私は、それよりも、この低い天井を支える柱が好きです。4面に素焼きのパネルと大谷石の彫刻パネルとが貼られているのですが、彫刻の意匠が1枚ずつ違うのです。
 これをデザインしたライトのこだわりも、もちろんすごいけれど、でも、これを彫った石工は何を考えていたのでしょう。目立たないのに、こんなに面倒くさいことをやらされて腹を立てたか。それとも嬉々として難題に挑んだか。おそらくは後者だと思います。
 私が「帝国ホテル建築物語」で描きたかったのは、ライトの偉大さよりも、そんなふうに頑張った日本人なんだなと、4刷を迎えて、改めて思った次第です。


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