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飲食店の「当たり前」 〜インドネシアの場合〜

こっちのスーパーで弁当を買うとき、あるいはレストランで食事をするとき、大抵使っている肉の種類が明記されている。
鶏・豚・牛。
多民族国家インドネシア。多様な民族が集まるということはつまり宗教も多様ということ。
そしてそれはつまり、食に関しても多様ということだ。


空港で買ったシュークリームに、見慣れないマーク。
日本でも知名度が上がってきたけれど、「ハラル認証」というやつだ。
イスラム教を信仰するムスリムは、豚を不浄として豚肉を食べない。
豚肉だけじゃなく、派生物(ゼラチンなど)やイスラムのやり方以外で屠畜された牛肉や鶏肉、アルコールも摂取しない。
ハラル認証とは、「この食品はイスラム教的にオッケーなやつですよー」という保証のようなもので、専門の認証機関(世界各国200くらいあるらしい)が調査する。

これは飲食業として当然、意識せざるを得ないポイントだ。
なぜならば、インドネシア国民は88%がムスリム。想定するお客様は大方ムスリムだ。
そのため、食材を業者へ注文するとき、「ノンハラルVer」と「ハラルVer」のカタログを渡されることもある。
そうでなくとも、
・ゼラチン 10kg
・ゼラチン(ハラル) 10kg
と併記されていたりする。
当然、ハラル食材の方が高いわけだが、店舗は胸を張って「うちの食材はハラル食材を使っています」と言えるようになる。

このムスリムの食べ物に関する意識として、印象深いエピソードがある。
店の厨房機器(食品が触れるところ)を除菌するためにアルコールスプレーを使ったとき、「私はムスリムなので、揮発するとしてもアルコールが触れたら食べたくないですね」と言われたことがある。
カルチャーショックだった。
そんなに不快感をもたらすとは思ってもみなかった。
ちなみに彼はビールが大好きだ。

ムスリムでもバーテンダーはいるし、ハラル認証を気にしない人もいるだろう。
今は断食の時期だが、人によってその厳格さは異なるのだろう。
ただ、飲食店としては、なかなか無下にはできない。
そして、この国の信仰への気配りを知ってしまうと、日本のムスリムは大変な思いをしているのではないかと心配になる。


ところで、多民族国家他宗教国家のインドネシアは、島によって信仰が変わったりする。
例えば、全国民の88%はムスリムだが、バリ島の住民の90%はヒンデゥー教徒だ(正確にはインド仏教との習合らしい)。
そして彼らは、牛を神聖な動物として牛肉を食べない。
だから弁当やレストランのメニューには豚だけではなく、牛、そして鶏につて記載されている。


カフェなので、肉料理を出すわけではないが、信仰と食事が当たり前に結びついているこの国でやっていくということは、つまりそういうことだろう。

難しく、面白いポイントだ。


ハラル認証についてはこのページと、この本がおすすめ。


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