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『チェリまほ THE MOVIE』~最終的な映画の感想

いろいろ言いたいことはあれど、すべてはラストシーンに集約されている。

「行こうか」の黒沢の呼びかけは、なぜかちょっとした散歩の帰り道とは思えないような、思い詰めた、どこか決然たる響きがあり、おや?と思う。それに応え、歩き出す安達。

冬枯れの寒々とした一本道、ふたりは黙って歩いていく。真っ直ぐ前を見て。固く手を結んで。その真ん中を。行き交う人々は、あからさまに笑ったり、全く興味を示さなかったり、見て見ぬふりをしたり、様々だ。

ふと、陽が差す。

行く道は、花咲く季節ばかりではなく、平坦でもなければ雨も降るだろう。けれど、ふたりはきっと、この先も歩き続けるのだ。ふたりだからこそ得ることができた勇気と力を携えて。そう思えて涙が止まらなかった。

ひとりの内向的な男が、殻を破って成長する、グローイングアップの物語から始まったチェリまほは、今、堂々と自らの道を自分で選び取る、何が幸せかは自分で決める、そしてそれを阻む困難と正面から向き合い続ける、社会を切り拓く物語として、静かな、しかし強く美しい決意で幕を閉じた。


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