ミュージカル『世界でいちばん美しい〜鎌倉物語〜』雑感

10/29昼、せかうつ1回目観了。
この初期衝動そのままに、ざっくばらんに感想を綴ります!


↑ということなので・・・
素晴らしく好きだったところと、個人的に期待外れだったことを分けて書こうかと思います。
最後になぜこの素晴らしい作品において期待外れが起きたのか?ネタバレするとめちゃくちゃ反省していますのでそこまで読んでもらえると。

まずは大好きだったポイントをば!

①場面転換のたびに動くピアノ


何か一つの象徴的な装置が場面転換の目印的な役割を果たすのはあるあるだけど、
確かにせかうつは作中ずーーっとピアノがあって、もちろんあるけど、時間の流れるごとにピアノの立ち位置は変化してるよなあと気付かされた。

席にもよると思うけど、島崎くんがせったクンと距離を感じる2回のシーンで私の席からはせったクンの顔がピアノで見えなくなって、それがすごくすごくよかった!!

②なんといっても曲!!!!


せったクンの曲を小説から想像してきたけど、私のチンケな想像力を当たり前のように凌駕してしまった。本当に良い曲づくめ!

もっと激しい演奏を想像していたけど、ずっととても優しかった。
せったクンの音楽への態度も、真っ直ぐで熱烈なものというより大切な宝物って感じで印象がガラリと変わった。
ますますせったクンが大好きになった・・・。

せったクンのピアノ演奏の指の運びも成長につれてどんどん変化していくのがすごかった。
特に高校生ぐらいの上手くなったけどぎこちない時期の演奏、絶妙ですごい!

あと、せったクンの演奏やチェロの音階が歌と地続きで鮮やか。ミュージカル演出に抵抗ある人も説得できそうな巧さがあったなあ

一番よかったのはもちろんエレキングとキングギドラの歌。


③「ぼくがピアノに向かうとき ぼくは音楽の旅人さ」での激突

ここは、「期待外れだったこと」にも挙げているので矛盾してるんですが……
津々見は台詞を歌うのに対して、せったクンは何を言われてもこのフレーズの繰り返し。
音楽への没我を象徴する最高のシーン!

もっと緊迫感があっても…と思いつつ、その緊迫感のなさこそせったクンだ!とも。

音楽へのひたむきな態度をもって津々見に立ち向かい、津々見もまたその純真無垢さに追い詰められる…という2人の相入れなさはこの対話、このワンフレーズの一辺倒に凝縮されてると思った。

④推しユニ主演2人のお芝居

お芝居に詳しくないけど、共演者のみなさんと比べてしまうとまだまだなんだろうなって思う。
でも、2人の個性がよくよく出ていて感動した!

原作者の藤谷さんが「横原くんは憑依型で椿くんは自分を軸にしている」とおっしゃっていて共感。

アイドルのお芝居をみるときに私もよくこの観点を持ち出すんですが、確かに、今回の2人のお芝居はその通りで。

でも、せったクンと島崎くんだからそうなった可能性もあるなあと思っていて!

せったクンは、浮世離れした存在だからこそ美しいし、共感の外側におかれて然るべき存在。
対して島崎くんは、せったクンを美しいと思うべき読者のナビゲーターでもあると思う!
共感が必要だから、椿くんは投影を選んだのかなあとか思ったり思わなかったり。

横原くんに関しては、センスのいい人でもあるけど、それ以上に戦略家の側面が強いという印象なので、横原くんもまた自分を捨て憑依を選んだのかなあとか。

なんにせよ、2人ともすごく真摯に役と向き合ったことがよくわかる誠実なお芝居で、私の大好きなIMPACTorsのメンバーやなあ〜!!と大興奮しちゃった。


他にも数え切れないほど好きなところある。
素敵なセリフが原文ママだったり。
特に「セックスがしたいです」のところ!
あれこそが世界でいちばん美しい男女の会話だ!

とかとか!


そして、少し期待外れだったことを。
これは末尾にも書くんですが、完全に私の観劇態度を改める必要も感じました。
ここから読まれる方は最後まで読んでいただきたいですーー!


①津々見勘太郎の描写の物量

せったクンの美しさは津々見勘太郎のあれこれあってこそ深く広く残酷にきらめくと思っていた。
だから津々見が単なる嫉妬心で、あくまで故意にせったクンを殺してしまうように見える展開が残念だった……泣
津々見の、かわいそうで共感できる半生こそが、せったクンが美しいという奇跡を際立たせるのに!

あと単純に、火事のシーンがどう描かれるのかを楽しみにしてしまってたから拍子抜けしちゃったのもある。


②「ぼくがピアノに向かうとき ぼくは音楽の旅人さ」というフレーズ


これは素晴らしいと思ったことにも含まれるからちょっと矛盾するけれど、せったクンの音楽へのひたむきな想いはもっともっと主観的であるはずと思っちゃった。
せったクンの音楽への向き合い方は「ぼく」すらも掻き消えるほどだと思ってたから、言葉選びにギャップを感じたかな。
まあこれも好みでしかないけど!

あとチェロとピアノの演奏会というフレーズを最後まで引っ張るなら、チューニングのシーンもう少し丁寧に描いてほしかったなと思った。
まあこれも私がチェロを大好きだからでしかないんだけどさ!!



あとは超細かいけど、男性陣の衣装素晴らしいのに、沢口さんと小海の衣装がソープリティーすぎてものすごく浮いてた……一番イメージとのギャップ激しかったのここかも。
ちょっとダサいし他の方々と雰囲気合ってないし、これに関してはあまり意図がよく分かんない。


総評

総じて、素晴らしい作品でした。
で、感想をぶわーっと並べて観察して思ったことがある。

私は観劇態度を改めたい・・・!

観劇するうえで、ネタバレとか下調べとかするかしないか問題、あるじゃないですか。
私はネタバレは絶対避けたいけど、下調べはしたい派。
歴史物だったら多少勉強してからいく。
実在する土地が描かれるなら、その土地の位置関係や歴史を軽く調べてからいく。

原作があるなら極力読む!

そしてせかうつも、原作を読みました。

衝撃的でした。
小さい頃から習わされてるピアノにチェロへの転向。山田耕作の校歌。映画の勉強。
島崎くんの要素のひとつひとつが自分と重なりすぎるうえに、島崎くんの思考、何よりせったクンのような人を「美しい」と思う正義が自分とよく似ていて没入せざるをえなかった。

せったクンの存在に救われ始めた矢先、失う。
なんで失わなきゃいけなかったの?と思う。
でもそれは「会いたいな」に吸収されていく。

とにかく、ミュージカルを観る前にこの作品の虜になってしまったのです。
「世界でいちばん美しい」を崇敬しすぎてしまった。

こうだったらいいな、ここはどう描かれるのかな、という期待と想像を育てすぎてしまった。

毎週のように観劇していますが、明確に好きなところとそうでないところがここまでハッキリしているのは初めて。

もっとフラットに観たかった!!!と痛烈に思いました。
でも、原作を読んでなかったら3枚もチケット持ってなかった。原作を読んでなかったら、こんな長々と感想を語れなかった。

観劇スタイルとの向き合い方、超難しいなあって!思いました!

とりあえず来週の2回目、フラットに肩の力を抜いて楽しめたらと思います。
大好きなところももう一度新鮮に味わいたい!

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