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エッセイ:可愛い子とお笑いライブに行った話

 先日投稿した超短編小説「今年もまた、夢を見る」が50スキを越えました。ありがとうございます!!
 
 スキをもらいたくて小説を書いているわけではないし、スキの数がすべてではないのだけれど、たくさんもらえるとやっぱり嬉しい。基本的にスキが20ちょっとの作品がほとんどなので、50を超えてくると「おっ!」と思う。
 嬉しい。
 とても嬉しい。
 とても嬉しいけども!

 正直なところ「これが50いくのか!!?」という気持ちもある。
 M-1グランプリを観た後の余韻でニヤニヤしながら書いた作品のスキが50を超えて、わりと練って、言い回しとかにもこだわった作品が20いかなかったりする。「え、そうなん!?」と思う。
 まあでも、そういうものなのでしょう。
 
 さて。M-1の余韻、とか言いながら、アナザーストーリーは見忘れたニワカお笑いファンの私ですが。
 大学時代の、お笑いにまつわる思い出話をひとつ。


 同じ学科の同級生に、とても可愛らしい女の子がいた。名前はとりあえずAさん、としておこう。
 Aさんは小柄で素朴でおとなしくて、ちょっと訛っていた。
 そんなAさんと私には、お笑いが好きで、「東京03」さん(以下敬称略)が特に好きであるという共通点があった。大学時代、私には全然友だちがいなかったが、Aさんとはときどきお笑いの話をしていた記憶がある。

 ある日、私はAさんと一緒にお笑いライブを観に行くことになった。
 何組かの芸人さんが、地方に来てくれるタイプのライブだ。いわゆる「営業」というやつなのかな。そういうところはよくわからない。
 どうやってそのライブの存在を知ったのかは忘れたが、私はAさんに「一緒に行こう!」と誘った。人を誘う、ということがとことん苦手で、それゆえ(いや、他にも理由はあるけども)友だちがいない私だったが、なぜかあのライブに関しては躊躇わずに連絡した気がする。
 AさんはすぐにOKしてくれて、誘ったのは私なのにチケットの手配までしてくれた。せめてチケット手配してから誘えよ、と今になって思う。

 ふたりで電車に乗って、駅のドトールで軽く昼食をとって、地図アプリで会場の場所を調べながら歩いた。どんな話をしたかはほとんど覚えていないが、Aさんの
「矢口ってコントより漫才が好きだと思ってた!」
 という言葉はなぜか覚えている。
 はい、矢口はコントが好きです。もちろん漫才も好きだけど。なぜAさんが「矢口は漫才が好き」と思っていたのかは今でも謎である。というか、どういう会話の流れだったのかも謎。
 ただ、会場へ向かうまでの道がとても楽しかったのには間違いない。

 ライブの出演者は、なかなかに豪華だった。
 まず、東京03(私たちのいちばんのお目当てである)。それからラバーガールさん、流れ星さん、我が家さん、平野ノラさん、当時はまだあまり有名ではなかったけれど(私が知らなかっただけかも)吉住さん、そして、サンドウィッチマンさん!他にもいろんな芸人さんがいた。
 いや、これはすごい。
 改めてこうやって書き並べてみて、めちゃくちゃ豪華やん…!と思う。
 トップバターがサンドウィッチマンで、トリが東京03だった。笑いっぱなし、興奮しっぱなしだったなあ。

 ライブ終了後、なんと「出演されていた芸人さんのDVDを買うと全員とハイタッチできる」という大サービスがあったので、迷わず参加した。私は東京03の「自己泥酔」、AさんはラバーガールのDVDを購入した。
 ちなみにそのライブの日の夜にM-1グランプリがあり、審査員である富澤さんの時間の都合で、ハイタッチの時間にはサンドウィッチマンはいなかったので、それはちょっと残念だった。でも、東京03の飯塚さんに「飯塚さん!(本当はこのあとに「応援してます!」とか「ファンです!」とか言いたかったけど、緊張して何も出てこなかった)」と声をかけると「はい、どーもー」と答えてもらえたのはめちゃくちゃ良い思い出だ。大好き。

 おそらく、私のテンションはそこでピークを迎えてしまったのだろう。
 そのあとのことはほとんど覚えていない。
 Aさんとどうやって帰ったのか、晩ごはんは一緒に食べたのか、別だったか、どんな話をしたのか。きっと楽しかったはずなのに、全然覚えていないのだ。
 その次に記憶にあるのは、家に帰りついて「今日はめっちゃお笑いデーやなあ」なんて思いながらM-1グランプリを観たことだ。審査員席にいる富澤さんを観て「昼間、この人を生で見たんだ…」とひとり感動していた。

 Aさんとはその後、「またライブがあったら行こうね」「いつか東京03の単独ライブ行こうね」と話したけれど、結局、再び一緒にお笑いライブを観に行くことはなかった。タイミングが合わなかったのか、見たいライブがなかったのか。どうしてだっけ。
 それっきり、Aさんと特別仲良くなることもなかったし、私たちの関係はただの「学科の同級生」にとどまった。
 大学を卒業した後、何度かSNSのDMでやりとりをしたことはあるが(たしか「今日はキングオブコントだね」的な話だった)、長く続くこともなかった。
 SNSに投稿している写真に写っているAさんは、大学生の頃よりも綺麗になっていて、恋人もいて、とても楽しそうだった。

 もともと近かったわけでもないけれど、なんだか遠くに行ってしまったような気がする。

 Aさんとはもっと仲良くなれたんじゃないかなあ。
 今そんなことを思っても、どうしようもないけれど、あのお笑いライブの楽しい思い出には、小さな後悔がくっついている。

 



冒頭で出てくる超短編小説「今年もまた、夢を見る」↓↓


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