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原曲、元ネタあり

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アイデアの元ネタ、原曲、モデル等が明確に存在している作品を集めました。原曲があるものは、基本的に歌詞の解釈というわけではないので、悪しからず。
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ショートショート:会員制の粉雪(戯)

トイレから戻ると、俺が予約したはずの『粉雪』が削除されていた。 「誰?粉雪消したの」 一…

矢口 慧
4か月前
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短編小説:技術的特異点

『800メートル先、およそ2キロの渋滞です』  無機質なナビの声に彼は舌打ちすると、モードを…

矢口 慧
7か月前
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推し短歌:銘柄

推し短歌 三首 銘柄と番号まで 覚えたけれど 「禁煙継続」出る幕はなし 推している芸能人…

矢口 慧
7か月前
39

超短編小説:俺とカマキリ

 アパートの低いブロック塀に、緑色のカマキリが一匹。まだ小さい。俺の小指の第二関節ほども…

矢口 慧
11か月前
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短編小説:五月の雨

「五月雨って、五月の季語ではないらしいですよ」  ぽつりぽつりと小雨が降り始めた窓の外を…

矢口 慧
1年前
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超短編小説:11

 推しに恋人がいるらしい。  そうかそうか。いるのか、彼女。  いや、別に恋人がいるから…

矢口 慧
1年前
40

短編小説:夢語り

  青春を箏にささげる、と決めたはずなのに、今のところ全然ささげられていない。  高校入学と同時に箏曲部に入部してもうすぐ一年。入学してすぐの部活紹介で筝曲部の演奏に惚れ込み、即座に入部した私だったが、気持ちと技術は比例してくれない。来月には二年生になり後輩もできるというのに、まるで上達していなかった。焦っている。 「そんなに練習したいなら、おばあちゃん家に箏あるけど」  ある日の食卓、母が言った。 「え、そうなの?もっと早く教えてよ」 「知ってると思ってたから。光絵ちゃ

短編小説:帰らない!

 見事なまあるい月である。  今宵は満月か、と男は空を見上げた。男はとある村の真面目な農…

矢口 慧
1年前
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ショートショート:喫茶店のふたり

 最寄り駅近くの、古びた喫茶店。古びた雰囲気だけれど、ずっとあるわけではなくて、少し前ま…

矢口 慧
1年前
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小説:変異(下)

↓↓ 変異(上)  現場にいたのは、たいしたことない、2メートルほどのウサギが1羽だけだっ…

矢口 慧
1年前
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小説:変異(上)

 2XXX年。  遠い昔から危惧されてきた地球の大気汚染は、相変わらず続いている。しかし、生…

矢口 慧
1年前
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短編小説:中村はアイドルになる

「なあ、もしも俺がアイドルになったらどうする?」 「わけわかんねぇこと言ってないで早くバ…

矢口 慧
1年前
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超短編小説:雨音を掻き消して

『台風、大丈夫?』  と関東に住む姉から連絡が来たのは、非常用持ち出し袋を引っ張り出し、…

矢口 慧
1年前
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ショートショート:都市伝説にはなれない

 あれ、いつもよりトンネル長いな。  というのが、最初に抱いた違和感。  いつもの電車の、いつもの場所に座って、リュックを抱えうとうとしていた。  イヤホンから流れる音楽と、電車がトンネルに入ったとき特有の『ゴー』という音が混ざりあう。  でも、今日はその『ゴー』という音がいつもより長く感じた。  不思議に思って顔を上げてみると、ちょうどトンネルを抜けたようだ。同時に、電車は減速する。もう駅に着くのか。もう少し先だったような気がするが。  あたりを見渡して、私はもうひと