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トイレから戻ると、俺が予約したはずの『粉雪』が削除されていた。 「誰?粉雪消したの」 一…
『800メートル先、およそ2キロの渋滞です』 無機質なナビの声に彼は舌打ちすると、モードを…
推し短歌 三首 銘柄と番号まで 覚えたけれど 「禁煙継続」出る幕はなし 推している芸能人…
アパートの低いブロック塀に、緑色のカマキリが一匹。まだ小さい。俺の小指の第二関節ほども…
「五月雨って、五月の季語ではないらしいですよ」 ぽつりぽつりと小雨が降り始めた窓の外を…
推しに恋人がいるらしい。 そうかそうか。いるのか、彼女。 いや、別に恋人がいるから…
青春を箏にささげる、と決めたはずなのに、今のところ全然ささげられていない。 高校入学と同時に箏曲部に入部してもうすぐ一年。入学してすぐの部活紹介で筝曲部の演奏に惚れ込み、即座に入部した私だったが、気持ちと技術は比例してくれない。来月には二年生になり後輩もできるというのに、まるで上達していなかった。焦っている。 「そんなに練習したいなら、おばあちゃん家に箏あるけど」 ある日の食卓、母が言った。 「え、そうなの?もっと早く教えてよ」 「知ってると思ってたから。光絵ちゃ
見事なまあるい月である。 今宵は満月か、と男は空を見上げた。男はとある村の真面目な農…
最寄り駅近くの、古びた喫茶店。古びた雰囲気だけれど、ずっとあるわけではなくて、少し前ま…
↓↓ 変異(上) 現場にいたのは、たいしたことない、2メートルほどのウサギが1羽だけだっ…
2XXX年。 遠い昔から危惧されてきた地球の大気汚染は、相変わらず続いている。しかし、生…
「なあ、もしも俺がアイドルになったらどうする?」 「わけわかんねぇこと言ってないで早くバ…
『台風、大丈夫?』 と関東に住む姉から連絡が来たのは、非常用持ち出し袋を引っ張り出し、…
あれ、いつもよりトンネル長いな。 というのが、最初に抱いた違和感。 いつもの電車の、いつもの場所に座って、リュックを抱えうとうとしていた。 イヤホンから流れる音楽と、電車がトンネルに入ったとき特有の『ゴー』という音が混ざりあう。 でも、今日はその『ゴー』という音がいつもより長く感じた。 不思議に思って顔を上げてみると、ちょうどトンネルを抜けたようだ。同時に、電車は減速する。もう駅に着くのか。もう少し先だったような気がするが。 あたりを見渡して、私はもうひと