六月十八日の夢について
朝の目覚め
六月十八日、七時半頃に起床。昨晩に深夜の二時近くまで起きていたことを考えると中々に早い起床だ。意識は覚めていて手足も動いた。身体が固まっていて鈍く痛むことを除けば比較的良い目覚めだった。しかしてこの日は日曜日、スマホに表示された時間を確認した後に充電ケーブルを抜き、私はもう一度ベットに体を預ける。固い身体に柔らかくもないベット、覚めた意識をぼんやりと手放しながら私は無気力に腕を放った。
その日は珍しく夢を見た。ここ最近の睡眠の質がいいのか久しく夢を見ていなかった私は休日の惰眠、いわゆる二度寝によって面白い夢を見ることになった。少なくとも、文章に残そうと思う程度には面白い夢を。
思い出せる範囲で夢の中で見たことを並べていこう。
ホテルの一室、十名は入るであろう座敷、どこから出てきたのかもわからない大学キャンパス、夢の中で展開された支離滅裂な物語の舞台はそんなところだった。
ホテルの一室
私はぼんやりと大きな画面を眺めていた。全体的に柔らかい色味で装飾された部屋には無音に等しい音量で展開された物語が流れていた。私は柔らかな桃色のベットの上で座っている。映像はちらちらと瞳を焼いていて、私の意識は時折画面に溶け込んでいた。
しばらく画面を見ているといつの間にか隣には友人がいた。多分、最初からいたのだろう私は挨拶も交わすことなくチャンネルを変えた。先ほどまで見ていた映像は何か後ろめたかったようで、私は少し焦っていたような気がする。画面の右上に番号が表示され、映像はドラマを映した。普段ドラマを見ない私には何のジャンルかは分からないが、何か懐かしい映像だと感じていたことは覚えている。
友人を視界の端に捉えながらドラマに釘付けになっていれば、急に映像が一時停止した。ホテルの一室には見知った顔がぞろぞろと入ってきて、その全員が浴衣のような衣服を纏っていたことが印象的だった。
そうして、私は友人と部屋に入ってきた顔見知りの波に乗るようにホテルの一室を後にした。
座敷
いつの間にか私は独りになり、畳の敷かれた広めの座敷の敷居を跨いでいた。
畳のヘリを踏まないように気をつけながら一番奥の座布団を目指して歩みを進める。途中で座っている先輩や後輩に「お疲れ様です」と挨拶をしながら奥の座布団にたどり着けば、私の荷物が転がっていた。
どこかで見た他人の鞄に入った私の荷物を何の疑問もなく開けてみれば、何も入っていない感触だけが返ってくる。その行為に満足した私は手近にあった座布団を自信の足元に引っ張り、その上に腰を下ろした。さっきまでいなかった隣に座る先輩と無言の世間話をして、不意に目に入った外の風景が気になって私は走り出した。
大学キャンパス
広場のような場所で私は懐かしい面々と再会した。数か月前に会った友人からどこの大学にはいったのかも知らない一つ下の後輩、容姿の変わらない彼、彼女らに私は親しげに話しかけていた。
中、高同じ学校に通いながらもほとんど話さなかったあいつとは物理について、中学の部活で生意気だった一つ下の後輩とは服について、名前も覚えていない彼女には何か弱音を吐いた。
「どうも、久しぶり。(私の名前ではない文字列)です。ほら、覚えている?」
驚いた顔、嬉しそうな顔、気まずそうな苦笑、困ったようにひそめられた眉、そのどれもに高揚感を得ていた。私は近況について(その自覚なく)出鱈目を口走り、心の底からの笑顔を浮かべていた。
夢の終わり
比較的長かった夢の終わりは唐突に訪れた。
久しぶりに会った友人と歓談していた私は、何をとち狂ったのか噴水の湧いた池へと滑り落ちた。水の中に入ったときの焦りも苦しさもなく、楽しい時間が終わってしまうという寂しさだけが木霊していた。
九時四十七分、私は二度寝から起床した。
夢の中で見た後輩の顔を思い出しながら、あの後輩の名前は何だったかと靄のかかった頭を捻る。しばらくそうしていると段々と靄が晴れてしまい、とうとう後輩の顔も思い出せなくなってしまった。
私は机の上から眼鏡を取り、枕の上で波打っていた髪を手櫛で軽くまとめてから髪ゴムで縛る。凝り固まった肩を軽く回して上半身だけで伸びをする。
久しぶりに面白い夢を見たという満足感と夢の中でこうしたかったなという未練を浮かべながらパソコンに向かい、何度かタイプミスをしながら文字を入力する。
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