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妖測変換

 とんと文字を書くことが少なくなった。書類作成やメールはパソコンで、SNSの投稿はスマートフォンで、と言ったように手書きで文字を書く機会が少なくなったのは、自分だけではなく働きづめの社会人であれば皆そうだろう。たまに手書きで文字を書かねばならなくなった場合、漢字が出てこなくなることも多くなり、つい最近では「席」という漢字が出てこなかった。

 PCもスマホも「予測変換」という機能がある。これも漢字が出てこなくなる一因ではないかと思う。何文字か打てば普段よく使っている単語を出してくれるのだから、書き手の頭を使う機会を奪っているのではと思ってしまうのだ。もちろん便利なのは重々承知だけど。

 しかしその予測変換も何故それが? というような単語が出てくることもある。実際に私が文章を書いた際に出てきた予測変換を見てもらいたい。

・ 偶蹄類
これが最も直近の例。「偶然」と書きたくて「ぐう」と打つと最初に出てきた。友人に偶蹄類と奇蹄類の説明をした時に調べた記憶があるが、そんな頻繁には打ってないはず。

・ スーシーカオフー
漢字では「四喜烤麩」と書く上海料理。だいぶ前に中華料理を食べに行った際に調べたのだと思う。記憶が正しければ注文したが売り切れだったはず。

・ ガーゴイル
「が」と打ったら「ガンダム」の次に出てきた。これはもはやきっかけを思い出せない。ちなみに小説やゲーム、アニメなんかでは動く石像の怪物として登場するが、本来は雨どいの機能を持つ怪物をかたどった彫刻のことで、ガーゴイルという名前も水を吐き出している時の音に由来しているらしい。

 挙げる始めるとキリがないのでこの辺りで止めておくが、頭を振り絞って思い出してもそんなに頻繁に使用していないものも予測変換では出てくる。今回挙げた三つは顕著な例だ。もしかするとスマートフォンは「こんな単語を打つ人間は変な奴だ」と私のことを認識しているのかもしれない。まあ、それは冗談として……。
 
 最初に書いたように予測変換という機能はもちろん便利である。ただ時たまあまりに不意すぎて驚く単語が出てくるのもまた事実。スマートフォン側は「過去にお前が打ったんだろ」と思っていそうだが。ただ例に挙げたように「この単語は何時どういう状況でつかったんだ?」と、自分の記憶を思い出すキッカケをくれているのだと考えると面白いのかもしれない。

 待てよ、そうすると記憶もスマートフォン頼りになってしまうのか?

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