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弾丸は込めて撃つもの

 「・」を使った箇条書きのリストのことを英語で「bullet list」という。直訳すると「弾丸リスト」。To do、つまりやることリストや、wish list、これから手に入れるべき欲しいものリスト、に使われるから、未来に向けて放つイメージでbullet listなのかなと思う。

 ある時の上司は、このbullet list の先頭にチェックマーク「✔」を付けていた。チェックマークって「やりました」の印なんじゃないかな、と一瞬疑問が沸いて、それがすぐに「書き出したやるべきことは必ず、最良の方法と時間でやる」という、勤勉な彼女の仕事に対する攻めの姿勢を良く表している、ぴったりだ、と思った。

 彼女は仕事や他の面においても自分の責任を全うすることにかけて、人よりも必死に、どんな時でもそれに応えようとしてきたし、そのための努力を惜しまなかったし、そして応えて来たのような人だった。そんな感じが、側に居て伝わってきて、私もそうなりたい、と思った。あるひと固まりの仕事があると、それを一つ一つの作業に分解して、それを適切なオーダーに頭の中で組み立てて、それらを適切な人員に割り振り、自分もその手となり目の前の仕事を適切な時間で仕上げた。

 それを端で見ていた社会人に足をかけたばかりの私が「彼女のようになりたい」と思い、いつしか自分のbullet listも「✔」で作るようになったのは不思議ではない。

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 残念なことにその仕事が求めるものに追いつくことができず、私は職務を全うすることができなかった。その「✔」が全て、予定されている通りに終わるか、は、彼女と特性の違う私にとっては、別問題だったのだ。あの時、もっと自分の特性を知り、それを克服する手立てを知っていたら、支援を求めることができていたら、と思うと今でもほろ苦い気持ちになる。

 思えば、この人生の前半(と言ってもつい最近までだから30年ちょっとになる)は、やろうと思って実際に行動しないことばかりだった。タイミングを待って、待って、それが訪れなかったタスクは未達成のまま棚上げされて埃をかぶった。今でも、そんなのが、うじゃうじゃある。実は、2020年は、私にとってこれまでやろうと思ったのにしなかったこと、とやりたいと思ったこと、を全部達成する年、ということになっている。タスクの量の管理は苦手なので、スーパー忙しい。でも、生き生きしている。そしてそれはいいことだ。タスクと一緒にいつの間にか自分の大切にしたい価値観まで埋もれさせて心が曇っていくのよりも、遥かに、いいことだ。

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 今でも私のリストの各項目の先頭には「✔」が付いている。予定したことはやり切り、手に入れると心に抱いたものは手に入れる、という意思と共に。目標という的を目がけて込められた弾は、そういうエネルギーで撃たなくちゃいけない。それを学ばせてもらった彼女と職場には、心から感謝している。

 わたしは今日も、弾を込める。

 あの時達成し切れなかった希望を、何万倍かにして、更に多くの人に届けるために。そうやって未達成のことがらが積もって押しつぶされそうになっているかもしれない、人たちに。希望を抱えてこの世を去らなければならなかったかもしれない、魂のことを想って。手を動かし続ける。



 
おまけ

午前中のタスク終わったぞーー❤️❤️

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