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【レポート】日本の食を支える技術!「FOOMA JAPAN 2024」に行ってきました

だから、今日もごはんが美味しいんだ。


東京ビッグサイトで6月上旬に開催された、食品製造テクノロジーの展示会「FOOMA JAPAN 2024」に行ってきました!

FOOMAとは「日本食品機械工業会」という組織の名前です。FOOMAが主催するイベントだから、FOOMA JAPAN。

FOOMA JAPANは、食品づくりに関わる機械などを、実際にそれを使う工場やレストランの方々に紹介したり、商談を行ったりするイベントです。
料理を作る機械だけでなく、それを支える技術も集まっています。
たとえば、農家や牧場から仕入れた材料の下ごしらえをする機械や、作ったものを運んだり保管したりする機械。他にも、工場で働く人の安全を守ったり、もっと良い仕事ができるようにするためのシステムなどなど。


私は食品業界に関わっているわけではありませんが、新しい技術が大好きな一人のお客さんとして、ご迷惑にならない範囲でたくさんお話を聞かせていただきました。

会場内は撮影禁止だったため、代わりに資料を頂けるだけ頂いてまいりました。
これらを背負った帰り道は、すばらしいトレーニングになりました。

この記事では、専門的な情報を自分なりに理解できた範囲で解説しているため、正確ではない表現が含まれている可能性があります。
気になる点がありましたら、コメントでお知らせください。

可能性は無限大、未来の料理づくり!

スイーツ版3Dプリンター登場

ところ狭しと会場に並ぶ、さまざまな会社の展示。
その中でも心惹かれるのは、やっぱり今まで世界に無かった新商品をつくるテクノロジーです。

特に未来感にあふれていたのが、武蔵エンジニアリング株式会社の「3Dフードプリンタ」

もともと武蔵エンジニアリングさんはディスペンサー、つまり、物体の表面に液体を塗る・コーティングする技術が得意なメーカー。
そこで培われたものが、この3Dフードプリンターにも用いられているのです。

チョコレートだけでなく、飴を使うことも可能。
お菓子作りの現場にこれがあれば、デコレーションの幅が広がること間違いなし!


そして、そんな3Dフードプリンターに勝るとも劣らないもう一つのマシン、それが「カスタム デコレーションシステム」

ケーキの上にチョコレートでメッセージやイラストを描くやつ、ありますよね。
それをロボットで行うのがカスデシ(勝手に略しました)です。
専用のソフトを用いて画面の上にタッチペンで描くと、描いたまんまにデコレーションをしてくれる、というシステム。

例えばバースデーケーキで、誕生日のメッセージを書くときを想像してみてください。
ケーキ屋さんでメッセージを伝えて、パティシエがその通りに書くことが今は多いのではないかと思います。
でも、カスタム デコレーションシステムがあれば、自分の筆跡でケーキにメッセージを書ける!
ディスプレイ上に描き終えてからロボットが動くので、失敗がないのもいいところです。オムライスの上にちいかわを描こうとして、謎の生き物が爆誕してしまったことがある私には、このメリットが大きく感じます。


調理はロマンを極める時代

調理工程のほとんどを自動で行ってくれる最先端の料理ロボットは、やっぱりロマンの塊。

中でもHestiaロボティクスの自動調理器が動く様子は、もはや料理を超えた芸術です。
炊飯器の釜のような形をした鍋が回転しながら、一つ一つの調理工程を淡々と、しかし優雅に実行していく。

何が良いって、調理が終わった鍋の洗浄も自動でしてくれるところです!

お皿に完成した料理を盛り付けたあと、おもむろに鍋がひっくり返り、下からぷしゃっと噴き出す水であっという間に洗ってしまいます。
資料によると、その時間は15秒!

あまりの手際に、試食の麻婆豆腐を持つ手が震えてしまいました。


自動化を極めたのがHestiaさんだとすれば、人間の実力を引き出すための調理機器にも力を入れているのが、株式会社フジマック。

FOOMA JAPAN会場では、大量の料理を一度に作れるバリオの実演が行われていました。

パン(調理を行う空間)の中は大きく四角いものの、均一に火が通りやすく、大量の具材を入れても温度を保ちやすいとのこと。

その火力の強さは、会場でパンの中を撮影するために使っていたビデオカメラの映像が湯気で真っ白になっていたことからもよく分かりました。

これ一台で、揚げ物なども含む加熱調理全般いけるそうです。
「自分の思い描くままの調理ができる」というのは、自動調理に匹敵するロマンではないでしょうか。


それらと並び、エースシステム株式会社のスチームライスマシーンで作った炊き込みご飯の味も、私の記憶に刻まれています。

名前の通りお米を炊くマシーンで、これまでに登場した機械よりも大量生産向けなのですが、特徴はその炊き方。
普通、お米を炊くときは米を水に浸してから炊飯器にかけますが、このマシーンは過熱水蒸気(沸点である100℃を超えた高温の水蒸気)を用いるため、水に浸す必要がないというのです。

その味はどことなく、コンビニの一番高いおにぎりを思わせるものでした。
納入事例の中に「コンビニベンダー」とあったので、本当に使われているのかもしれません。


いつもありがとう、寿司ロボット

話は変わり、今度は寿司ロボットについて。

今や回転寿司の裏側で寿司ロボットが動いていることは有名ですが、その実物を生でみられる機会を得たことは嬉しかったです。
最低でも月一回は寿司を摂取しないと死んでしまう私にとって、寿司ロボットメーカーの代表格である鈴茂器工株式会社(SUZUMOさん)は救世主です。

寿司ロボットは人手不足を解消するだけでなく、世界中どこでも安定したクオリティのシャリを作れることも魅力!

ゆえに、海外にお寿司屋さんを作ろうとしている方向けに、英語で寿司ロボットを紹介しているコーナーもありました。
あの場所がどなたかの目に留まり、美味しい寿司を食べられる人がもっと増えますように。


工場だけじゃない。小さなカフェの大きな味方!

FOOMA JAPANでは、大きな工場や調理場を支える技術が多く展示されています。
ところが、個人経営のカフェやレストランなど、小規模なお店で活躍できるタイプの技術も負けていません。

株式会社マルゼン(子会社のフジサワ・マルゼン)は、製菓・製パン向けのオーブンなどを作っているメーカー。
会場では、社内のシェフが実際のオーブンやミキサーを用いて調理するショーが行われていました。機械そのものだけでなく調理のノウハウも自慢のようで、「失敗しないコツ」の解説なども交えたショーでした。
そして、完成したものは試食可能。
レモンパン、カリカリで爽やかで、おいしかったな・・・

甘い匂いに惹かれたのは、株式会社マスダックが実演していた卓上パンケーキクッカーのコーナー。
小型で扱いやすく、細かく温度調節できる銅板が特徴。
誰でも簡単に綺麗なパンケーキが作れるとのことで、お店やるつもりがなくても欲しい一台でした


AI技術が素敵な食卓を守る!

ちまたで話題のAI技術。
食品業界では、異物混入や不良品を防ぐための検品システムに多く使われていることがわかりました。

ユアサ商事株式会社・シブヤ精機株式会社・株式会社 VRAIN Solution・コグネックス株式会社などなど・・・広い会場の中でAI関連の展示を目にする機会は多く、間違いなく今年の主役の一つでした。

不良品といっても、いろいろなパターンがあります。
製品と関係ない物が入っていたり、割れていたり、袋がちゃんと閉まっていなかったり・・・
ヒトであれば「なにが良くて、なにがダメか」を見分けることは簡単でも、機械ではそうもいきません。まったく予想外のパターンが来た時に、スルーしてしまう危険と隣り合わせなのです。

そこで登場するのがAI。
さまざまな製品のデータを学習したAIは、見たことがないタイプの不良を見つけた時にも「これは不良品だ!」と気付いてくれる可能性が高くなります。


例えばユアサ商事さんの展示エリアでは、AIを搭載した「F[ai]ND OUT EXW」でおせんべいの検査をする様子を見学できました。

良いおせんべいであっても、その形や色は微妙に異なるもの。
ましてや、割れたり欠けたりしているおせんべいは、1つとして同じものはないオンリーワン。世界に一つだけの花。
単純なルールで、それらを仕分けることはできません。

ポイントは、「良いおせんべいとは何か」を知ること

このAIは、あえて「良いおせんべい」”だけ”を学習しています。
そうすることで、AIの脳内に「良いおせんべいの条件」ができあがり、そこから外れたものは「不良なおせんべい」なんだ、と判断できるわけです。

これなら、「なぜ不良なのか」をいちいち考えなくても、より正確に、いろいろなパターンの不良おせんべいを弾くことができます。
このようなシステムを「教師なし学習(良品学習)」と言い、めったに出ない不良品のデータを用意する必要がないなど、他にも色々メリットの多い手法です。


こうしてAI技術が進むと、「もう人類いらねぇんじゃないかな」という心配も頭をよぎりますが、そんなことはありません。

こうして作られたAIを、現場でどのように組み込むのか。
より使いやすくするために、AIをもっと鍛えるにはどうするか。
それに、AIがデータを取り込むためのカメラやセンサーにも、進化の余地があります。

製品の種類によっては、AIではなく人間が決めたルールに従う方が良いという実例もあり、なんでもAIが解決してくれるわけではありません。
安心な食品を届けるために、まだまだ人間が考えることは山積みなのです。


まもれ、清潔な現場!

私たちが安全で美味しい食にありつけているのは、工場や調理場の徹底した衛生管理の賜物。

日本では2021年から、アメリカで考案された「HACCP(ハサップ)」というルールに沿った衛生管理が義務化されたそうです。


ここでクイズです。

工場で使う手袋や清掃用具といった道具は、ほんのちょっとでも部品が欠けてしまえば食品に混入してしまうかもしれません。
そうした事態に備えて、道具にあるものを混ぜることがあります。
それはなんでしょう?

混入自体を防ぐのではなく、混入してしまった場合のリスクを避けるという目線で考えてみてください。




正解は、「金属」!
製品の検査では、金属探知機が使われます。
プラスチックの道具に少しだけ金属を練り込んでおけば、この金属検査のタイミングで発見できるので、間違ってお客さんの元に届いてしまうことを避けられるのです。

カラフルな原色のブラシがひときわ目を引く、清掃用品メーカーの株式会社 高砂。
金属検出機対応ブラシのHPMシリーズは、そもそも抜けたり切れたりすることがないよう工夫がなされている上、仮に抜けてしまった場合でも、目立つ色と練り込まれた金属で簡単に発見できるようになっています。

他にも金属探知機に引っかかる素材で作られた道具は、手袋(Erforlg Corporationが輸入販売)・ペン・断熱材(株式会社スリーハイ)などさまざま。
360度あらゆる角度から食品を守る、叡智の結晶がそこにはありました。


ここで紹介できたもの以外にも、異物混入を防ぐ技術は、働く人の体に付着した細かいホコリを取る掃除機から、虫が外から入ってこないように誘導する特殊なライトまで、本当に多種多様。

食品作りを行う現場の清潔は、幾重もの工夫で守られているということが分かりました。


「技術を支える技術」たち。

一つのパーツからなる機械はありません。
機械に使われる一つ一つのパーツもまた、それを作っているところがある。

中でも、今回のイベントの中で目立っている印象を受けたのが、株式会社 日本ピスコのロボットハンドパーツ。
具体的には、その先端に取り付ける吸盤のような部品(真空パッド)です。

工場で使うロボットハンドが運ぶ対象はよりどりみどり。
硬いプラスチックやフニャッとした袋、重いものに軽いもの。
PISCOさんは、それぞれの目的に応じたパーツを開発しているのです。

楕円形で、オレンジのスポンジがくっついた真空グリッパVRGは、紙袋に入った米を軽々吸い上げる超パワー!

ロボットハンドやそれを使うシステムは、他のメーカーさんの展示コーナーでも引っ張りだこ。
そこにPISCOさんのパーツが使われている、といった光景もいくつか見られました。
まさに、技術を支える技術です。


ちょっと特殊な視点から支えているのは、フォント(書体)を作っている会社の、ダイナコムウェア株式会社。

最近は一般用・業務用を問わず、調理器具の中に液晶画面が付いていることが増えてきました。
そんな画面に使う文字のフォント(組み込みフォント)を提案しているのが、ダイナコムウェアさんです。

メインで紹介されていた組み込みフォント「金剛黒体」は、なんと19言語対応のグローバルフォント。

ゲームなどが好きな人なら、海外作品の翻訳版が出た時に書体が変わってしまって、元のイメージが崩れてしまう感覚を経験した方もいると思います。
世界中で確実にイメージを統一できるグローバルフォントの存在は、とてもありがたいです。

料理が国境を越える時、それを支えるフォントも一緒に国境を越える。
すごい時代になったと、つくづく思います。



もっとお伝えしたいことはあるのですが、そうすると永遠に記事をアップできなくなってしまうので、ここで一区切りとさせてください。


ひとつ、このイベントへの参加を通じて実感できたのは、食品に関わる技術と向き合う人々がそれぞれ抱く想いです。

「手作りの方が、機械で作ったものより気持ちがこもっている」なんて間違いだと思います。
その機械を作る過程で込められた想い、数ある作り方の中から「その機械」をチョイスした人の想い、その機械をうまく使いこなす人の想い。

FOOMA  JAPAN 2024でその想いに直接触れ、日々私が食べているものもまた、無数の想いが込もった結晶なのだと分かりました。

いつものご飯が、一段と美味しくなったような気がします。

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