見出し画像

#寧々密会 吉高寧々×笠井爾示

恵比寿のAL Galleryへ。

笠井爾示が2年4か月に渡り撮り溜めて来たものを纏めた写真集に連動した写真展。

内容は特設サイトに詳しい。

写真展のステートメントとしても掲示されていたのは以下の文章。

 笠井さんと写真を2年半に渡り、写真を撮り続けてきた。具体的にいつ作品にしようとかはなく撮り続けてきた。
この2年半は自分の人生の中でも色んな価値観が変わってきたり、転機もあった。出会いも別れもあって、笑ったり泣きじゃくったり、家から一歩も出れなくなった時期もあったり、激動の2年半だった。今までにもこの先も、きっとこんなありのままな私は見れないと思う。

吉高寧々

 写真家としていちばん存在意義を感じるのは写真集を出すこと。こうして出せることは幸せなことだ。
『#寧々密会』は吉高寧々さんの写真集であり、自分の作品集でもある。僕は仕事の写真集と作品集を明確に分けているが、これは作品集である。

笠井爾示

日常にまで入り込んで撮っており、現場スチル(オン寄りのオフ)、現場オフショット(オフ寄りのオフ)、日常(プライベート)など、撮られた状況も様々。
整えてカメラの前に立ってはいるが、整え切ってはいない。
精神状態の波は表情にも体形にも現れているが、糊塗せず、暴き立てず。
肌にも表情にも綻びが出ているところもありつつ、生成りの美しさを掬い取っている。

ガラス張りの入口から中へ。
左側の壁は、ステートメントから始まり、細く黒い縁に白台紙の額に収められた小品が並び、ところどころにインタビューから抜粋された吉高の言葉が嵌め込まれる。
右側の壁には、同様に額装された大き目の作品。

正面奥の壁全面に、しどけなく服をはだけたカット。

ここは撮影可能。

右奥の壁に飾られた作品に惹かれる。

潤んだ目から零れる涙ひと雫。
カラーコンタクトの入った瞳からの表情は読み取れないが、白目が充血し、目のまわりや鼻の頭にも赤みが差している事から、高まった感情の発露としての涙である事は窺い知れる。
口の端に力が入り、無理に上げた口角からは、哀しみから流れた涙では無い事が伝わる。
堪えつつ、隠さない。
泣き顔でもあり、笑顔でもある。 美しい写真。

決め顔、利き顔の写真は勿論ありつつ、そうではない写真もあり、私はそちらにより心惹かれる。
その最たるものが右奥の壁に飾られたものなのだけれど、その写真の持つ普遍性などから「寧々密会」の写真は

写真集に収めるカット
写真展で展示し、販売もするカット
写真展でのみ展示し、販売はしないカット

に分かれ、当該写真は3つ目のカテゴリーに入る。

作品の大きさや配置も含め、写真展だから出来る事の詰まった写真展であった。

(2024.05.09 記)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?