見出し画像

第六回 写真人会 写真展「私の選ぶ三本 -Old Lenses Best3-」

一日の写真展巡りの口開けに、先ずは半蔵門。
底の抜けた好事家の道楽の極みを見に行く。

ステートメント

ゲスト作家としてハービー山口。

「オールドレンズで描く若者たち」
爽やかで希望に満ちた彼らの姿は、私たちに生きる喜びを与えてくれます。
オールドレンズはそんな彼らのエネルギーを抒情豊かに描いてくれました。
ハービー山口

穏やかに打ち解けて撮る、人との距離の近いスナップ。
一枚だけ「暴れん坊レンズ」で撮ったものがあり、クレジットを見るとフツーラ用のフリロン50mm/f1.5。
素描のようなざっくり描いた周辺部と、細密描写で描き出される二人の女学生。
弘法筆を選ぶ。

カメラと言う機械を意のままに操り、人と打ち解けてするりと懐に入る事が出来て、撮るべき瞬間を逃さない。
私には撮れない種類の写真。

牧野浩典
ソン・ベルチオのフロール
カラーの色乗りが「おフランス」な感じで良い。
映画のスチル風の組み方も面白い。

岡田祐二
ヒル・スカイレンズ(1920年代の気象観測用魚眼レンズ)で撮ったスナップに唸る。
突詰めた道楽の先にあるもの。
マクロプラズマート 5cm/f2.7 で撮られたスナップ。
当たり前ではないレンズやカメラを、自然に使いこなした3枚。

山田淳
MではなくRのズミクロン35mm、ヤシコンではなくGのビオゴン28mm、製造年代を考えるとロートルだが、うるさ型からは目くじらを立てられそうなキヤノンEFの70-200mm/f2.8。
撮る道具としての好みからの選択でありつつ、その来歴などに分け入っていく「めんどくさいマニア」な生き方に親近感が湧く。

市川泰憲
Aiニッコールの35mm/f2、50mm/f1.8、135mm/f3.5。
第1回カメラグランプリをニコンFAが受賞した年に、記念にと買ったと言う3本。
翌年の受賞がミノルタα-7000なのでオートフォーカス時代到来の直前の頃。
発売当時はそれなりの価格であったが、今なら手ごろな値段で手に入るので、「オールドレンズ」の入り口としても、気軽に使える単焦点レンズとしてもお勧めできるレンズ。

諸田圭祐
コニカ ヘキサノン57mm/f1.2とニッコール の50mm/f2と105mm/f2.5
ポートレート用として定評のあるヘキサノンと、「女の子を撮っちゃいけない」と言われた頃のニッコール。
底の底まで暴くようなニッコールで粗を出さぬように撮ったニッコールでの一枚と、柔らかく掬い取られたヘキサノンでの一枚の対比が面白い。

上野由日路
ウィーン表記、江戸時代のベッツバール。
中心部は良いが周辺は暴れる古典レンズ。
旨味と雑味、どちらも生かした画面構成の妙。
アポジンマーで撮った着彩写真なども含めて、オールドレンズの可能性を提案するような作品群。

原昌宏
アンジェニュー 50mm/f1.5、ウォーレンサック シネベロスティグマット 2inch/f1.5、パンカラー55mm/f1.4
文字列を見ただけで涎の出る3本。
ウォーレンサックはクララスMS-35で使ったことがあるが、シネベロスティグマットになると味は別物。 どうかしていて良い。
パンカラーも55mm/f1.4となると同じパンカラーでも役者が違う。

私はパンカラーよりオレストン。
イエナのレンズはだいたい売り払って、手元に残したのはメイヤーばかりだったのだけれど、こうしてみるとパンカラーも捨てがたい。

カメラ/レンズ道楽の底が抜けた人々の集まりの写真展なので、こともなげに撮っているレンズがまたとんでもない物であったりもするのだけれど、それを鼻にかけるようなところも無い。
浅葱の頭巾を脱げば何の何某と言うような人が、何食わぬ顔で「出展者でござい」と受付をしている。

こんな恐ろしい写真展もなかなか無いが、それだけに面白い。
次回は九月、テーマは「国産レンズ」とのこと。

(2024.04.17 記)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?