星の海
君が見上げる先には何があるのだろうか。
と、今まで何度も思ってきたのに、いつも、確認せず、
いつかに、先延ばしに、しつづけてきてしまった。
今日は、あの日の、君だけの展望を、わたしの目に焼き付けるために、
天体望遠鏡を、かってきた。
のぞけば、よわい光が、ぼうっと明るく、みえている。
一寸ずつ、ピントというものを合わせ、わたしは、遠くをみる。
少しずつ、君の見上げた空を、望遠鏡の円に、入れる。
とは云っても、
そこには、無数の星々が、散在していて、
いったい、どれが、君がみつめ続けた星なのか、
皆目見当もつかないのだった。
もしかすると、君も、いつも同じ星を見たわけじゃあなくて、
もしかすると、まばらに散らばる星々の、どれかひとつを、
かいつまんで、日々、同定できないまま、
ただ、ただ、見上げていただけなのかもしれない。
そうであれば、いいな。
と、わたしは、望遠鏡に、
もう一度、目を近づけて、
手ごろな、星ひとつに狙いを定めて、
見つめた。
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