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夏休み

「夏と恋は、セットじゃなきゃ」

 そう云う君は、後ろ手に鞄を下げて、アスファルトを歩く。

「暑さがなんだか、駆り立てるんだ。私の両脚を」

 そう云う君は、後ろ手の鞄を放って、突き当たりまで走る。

「歯止めが効かなくなってしまう前に!」

 そう叫ぶ君は、私を目掛けてダッシュする。

 疾い接吻。舞う君の香りと、髪の波。

「あなたで、堰き止めておくよ。私の夏」

 君にかかる影と、斜陽。

 私にかかる、淡い夏の息。

 君と夏と恋。

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